表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

鉛筆づくり、始動!

鉛筆の試作を終えた翌日、父は領主館の会議室に関係者を集めた。

ミュネ、調理師、木工師。それからいつも冷静な執事ガルド・ハウル。

そして、末席にちょこんと座る私。


父は鉛筆を手に取りながら、ゆっくりと皆を見渡した。


「――まず、メイアが作ったというこの“鉛筆”。これは本当に可能なのか、材料の入手はどうなのか。それを順に聞こう」


真っ先に口を開いたのはミュネだった。


「芯の材料は炭と粘土です。炭は調理場で常に使われておりますし、粘土は領主館の庭や周囲の土から簡単に採取できます」


調理師も続く。


「炭を砕くのも、混ぜるのも、焼くのも難しい作業ではありません。適度に火を調節すれば、しっかりと硬く固まります」


父は驚きに目を少し大きくした。


「そんなに簡単なのか?」


「はい。お嬢様の指示の通りに行うだけでした」


次に木工師が手を挙げた。


「木の削り加工も問題ありません。細かい作業ではありますが、慣れれば量産できます。木材も森からいくらでも取れます」


父は思わず息を呑んだ。


「炭も、粘土も、木材も……すべて領内で揃うのか」


母も同じく驚きの声を上げる。


「しかも難しい工程もない……すぐにでも生産できるのね」


私の胸はわくわくと高鳴った。

だって――いよいよここからが“仕事”の始まりだから。


父は深く頷き、テーブルを軽く叩いた。


「では、生産体制について考える必要がある。ガルド!」


「はっ」


呼ばれた執事ガルド・ハウルは姿勢よく一歩前へ出た。

犬族特有の鋭い視線、無駄のない動き。さすがは父の右腕だ。


「仮に、木工師が型を使い芯を挟んで削る作業を担当するとして……調理場では芯の生産、屋敷の者たちは炭砕きや粘土練りを行うとしよう」


父が言うと、ガルドはすぐに計算を始めた。


「一日で芯は……調理師が一人でも、おそらく十数本は焼けるでしょう。粘土と炭の混合作業は、他の者が行えばさらに倍は可能です」


木工師も口を挟む。


「削りの工程は……慣れれば一人で一日二十本は行けまさぁ。二人いりゃ倍です」


ガルドは素早く数字を書き、まとめる。


「三工程を並列で行えば、初動でも一日三十本――慣れてくれば五十本以上の生産が可能かと」


父の目がきらりと輝いた。


「……三十本!? 本当にそんな量を作れるのか?」


ガルドは堂々と頷く。


「はい。設備と人員が整えば、現実的な数字です。材料も領内で無尽蔵に採れますから、継続した生産ができます」


母も眉を丸くした。


「こんなに簡単に、価値あるものが……」


私は嬉しくなって、椅子の上でぴょこんと跳ねた。


「ね、ね!お父様、売れますか?いっぱい?」


父は笑った。


「売れるどころではない。これは……文字を書く文化そのものを変える可能性がある。

“インク”を必要としない筆記具だ。誰でも、どこでも使える。――これは大きな商機になるぞ!」


ミュネと調理師、木工師の皆が驚きで目を丸くしていた。


「お嬢様が……こんな発明を……」


「す、すごいお嬢様だわ……」


ガルドですら尾をぴんと立て、感嘆の表情を浮かべる。


「メイア様の発想力、恐れ入ります」


父は深く息を吸い、改めて決意するように宣言した。


「本日ここに、鉛筆生産の工房を設けることを決める!関係者は準備を始め、ガルドは必要な人員の割り振りをすぐにまとめよ」


「はっ!」


父は私の方を見て、優しく微笑んだ。


「メイア。お前はこの領地の未来を変えるかもしれない。お前の力を……これからも貸してほしい」


胸がじんわり熱くなる。


「うん!なんでもやる!いっぱい考える!」


母はそっと私の頭を撫でた。


「ええ……きっと、あなたは素敵な領主代理になれるわ」


その言葉に、私の胸はふわっと温かくなった。


そうだ。前世の知識だけでも、できることはこんなにある。私がこの領地を良くできるかもしれない。


――第2の人生、まだまだ始まったばかりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ