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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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紙づくり大作戦!幼女の自由研究、再び動き出す

鉛筆工房が仮稼働して三日。

フェルナード領では無理のない範囲で、少人数による生産が続けられていた。


「今日の出来はどうじゃ、メイア様」


木工師ロット老人が、削り終えた一本の鉛筆を掲げる。


「わあ……形が綺麗! 芯も折れてないし書き心地も良いです!」


ミュネも嬉しそうにメイアの隣で頷いた。


「最初の頃より、ずいぶん数が安定しましたね。怪我人も疲れすぎた人もいませんし、ペースはこれくらいで良いと思います」


ガルド執事は帳簿を閉じると、静かに言った。


「今は在庫を貯めることが最優先です。商品の品質を保ちつつ、無茶な増産は避けましょう」


「はい!」


メイアは元気よく返事をした。


鉛筆がある程度そろってきた今、次に必要なのは――


(紙……紙だわ!)


鉛筆があっても、書くものが無ければ意味がない。

領主館にある紙は、どれも白くなめらかで高級品。庶民どころか、領主家ですら滅多に使わない。


(真っ白じゃなくていい。茶色くてもいい。前に作った、あの手作り紙みたいなので十分!)


前世の夏休み。

孫と一緒に自由研究で紙を作ったことが、ふと蘇る。


水に浸した繊維クズを細かくして、すくって、干して……

あの程度なら、この世界でも絶対できる!



「ミュネ、ロットさん。次は“紙”を作りたいんです!」


昼食後、勢いよくメイアが宣言すると、二人の大人は固まった。


「か、紙……ですか?」


「また難しいことを……」


ミュネはうっすら青ざめ、ロット老人は頭を掻く。


しかし、メイアは引かなかった。


「難しくありません! ただの“自由研究”です!」


「じ、自由研……?」


「えっと、子供でもできる実験のことです!」


そう説明し、メイアは必要な材料を挙げていく。


「まずは繊維になる植物。木の皮でも、古い麻袋でもいいです」


「麻袋なら倉庫に朽ちかけたのがあるはずだ」とロット老人。


「それを水でふやかして、叩いて細かくします」


「叩く……なら、木槌を作りましょう。子供でも扱える軽いものを」


ロット老人が頷く。


「それから、紙をすくう木枠! これもロットさんにお願いします!」


「任せなされ。網は……ミュネ、どこかに使い古しはないか?」


「あります! 台所に破れかけの漉し網が……!」


ミュネはメイアを見て、そっと微笑んだ。


「メイア様。やりましょう。私も、お手伝いします」



そして翌日、屋敷裏にある物干し場の横で“紙づくり実験”が始まった。


大きな桶に、刻んだ麻袋の破片が浸されている。

ミュネが棒でかき混ぜ、メイアはその横で真剣に見つめていた。


「ロットさん、木槌どうですか?」


「ここにあるぞい。軽くて丈夫にしておいた!」


渡された木槌は、幼女でも扱えるよう短く、丸い形に加工されていた。


「すごい! ありがとうございます!」


そこからは、ひたすら叩く作業だ。


メイアが気合いを入れて木槌を振るう。


ぺちっ……!


「……か、硬いです」


「メイア様、無理はなさらずに!」

すかさずミュネが飛んでくる。


結局、繊維を細かくする作業はロット老人とミュネが中心となった。


「よし、だいぶドロドロになったな」


「これを“紙の素”として、木枠ですくいます!」


ロット老人が作った木枠には、細かな網が張られている。


メイアは慎重に枠を桶に沈め、ゆっくりと持ち上げた。


水が滴り、薄く広がった繊維だけが網に残った。


「……できた! これです!」


「これが紙に……?」


ミュネは目を丸くする。


「今は水だらけですが、乾かしたら固まります。ここに干しましょう!」


メイアは物干し場に枠ごと吊るした。


夕日が差し込む中、薄い紙の原型が風に揺れる。



翌日――


「できてる!!」


枠から剥がしたそれは、茶色くてゴワゴワしているが、れっきとした“紙”だった。


「……本当に紙じゃな……」


ロット老人は感心したように触り、


「わ、わたし……こんなの初めて見ました!」

ミュネは震えた声を漏らした。


メイアは胸を張る。


「まだ粗いですが、書くには十分です!」


鉛筆で線を引くと、しっかりと跡がつく。


「これで、領地の文書の紙代が節約できますし、量産できたら商品にも!」


「……メイア様。本当に、どこからそんな発想が……」


ミュネは呆れと尊敬の入り混じった目を向けてくる。


「これも領地のためです!」


メイアは笑った。


鉛筆につづき、紙も手に入る。

フェルナード領に“文字を残せる文化”が芽生え始めていた。

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