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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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ロウガ、商人の顔になる

試食会の会場は、もはや宴であった。


昆布出汁の香りが立ち上り、

焼き魚の皮がぱちぱちと音を立て、

味噌汁の湯気がふわりと漂う。


そこに集まっているのは――

領民は勿論の事、近衛隊、機構軍の面々、学術員たち、クラスメイト、そしてロウガ。


完全に異様なメンバー構成である。


「……なんだこれは……」


近衛隊の一人が、納豆を箸でつまみながら震える。


「糸が……糸が襲ってくる……!」


「食え。慣れだ」


機構軍の隊長はそう言いながら、納豆ご飯を豪快にかき込んでいた。


「……くっ……臭い……だが……」


もぐ。


「……うまいじゃねぇか……くそが……」


クラスメイト達はというと――


「え、何これ!? ご飯に味がついてる!?」


「この汁……毎日飲みたいんだけど……」


「漬物うまっ!? ずっと噛める!!」


完全に和食に心を持っていかれている。


そしてロウガ。


「……」


何も言わず、黙々と、煮物、焼き魚、白米、味噌汁、糠漬け、どぶろくを一巡し――


最後に納豆。


「……」


一瞬だけ箸が止まったが、


「……まぁ商売のためだ」


そう言って、一口。


もぐ。


「……」


もぐ、もぐ。


「……っふぅー……」


どぶろくで流し込む。


「……くそ……」


誰に聞かせるでもなく、低く言った。


「……完全に“商品”じゃねぇか……」


■ ロウガ、領主の元へ殴り込む


試食会がひと段落したころ――

ロウガは、一直線に領主の元へ向かった。


「で?」


「ん?」


「どうするんだ?」


領主はきょとんとした。


「どうするとは?」


ロウガは、深ぁ〜くため息をついた。


「はぁ〜……」


「メイヤちゃんが思いついた“和食”……“食の革命”が起きたって事は理解してるな?」


「おう! それは勿論だ!」


領主は胸を張った。


「わしは有能な領主だからな!独り占めなどせんぞ!皆にレシピを公開して、今や領地に根付き始めておる!」


ふふん!!


と、妙に得意げ。


ロウガは、ゆっくりと拍手した。


「はぁ〜……それはようござんした!うちの領主様は、なんて優しいお方なんだろうなぁ〜? ってか?」


「ん?」


「お?」


空気が一瞬、冷えた。


「……はぁ……」


ロウガは、頭を抱えた。


「まだ解らんか、この貧乏癖領主……」


「な、何ぃ!?」


「確かに新商品が登録されりゃ何処かの奴がその製品を使い出せば金は入る。そういう仕組みだからな」


「おう! それで十分ではないか!」


ロウガは、ニヤリと笑った。


「だがなぁ……」


「まだ時間があるって事はよ?“現物を持ってる方が強ぇ”って事なんだよ」


「……?」


領主の顔には、でっかく「?」が浮かんでいた。


ロウガは、机をバンッと叩いた。


「だからよ!!」


「早く工場でもおっ建てて!!」


「量産して!!」


「俺に売れって言ってんだよ!!」


「……」


「……」


数秒の沈黙。


そして――


「――――あ」


領主、ようやく理解。


「そ、そうか……!」


「現物……!」


「そうだ!!」


ロウガは指を突きつけた。


「“最初に市場を押さえた奴が勝つ”んだよ!!」


「味噌も醤油も納豆もどぶろくも!!」


「今はまだ“珍味”だ!!」


「だが王都に流れた瞬間、“爆発的商品”に変わる!!」


領主の顔色が、じわじわと変わっていく。


「……わ、私は……のんきに……レシピ公開しておった……?」


「そうだ」


ロウガは、はっきり言った。


「それも悪かない。だがな――」


「“売る準備”をしてからやれって話だ!!」


領主、崩れ落ちる。


「……すまん……」


「今なら……まだ間に合う」


ロウガは、腕を組んだ。


「工場だ。とにかく工場を作れ」


「乾燥昆布、味噌、醤油、納豆、どぶろく……

全部“流通”に乗せろ」


「商売は“物”だ。理念じゃねぇ」


■ その光景を見ていたメイヤ


少し離れた場所で、納豆ご飯をおかわりしながら、メイヤがぽつり。


「……ロウガさん、完全に商人の顔になってる……」


ミュネが苦笑いした。


「でも……正しい事も言っていますね……」


「うん……」


メイヤは、ふぅと息を吐いた。


「……私、また勝手に爆弾投下してたみたい……」


「いつものことです」


そして、領地は――


“食の革命”から、“商業革命”へと、確実に踏み込もうとしていた。

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