表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/189

領主、覚悟を決める。領地、和食に染まる。

領主は、静かに腕を組んで考えていた。


卓の上には――

昆布出汁の煮物、焼き魚、味噌のスープ、糠漬け、白い八十八、そして……問題の納豆。


(……改めて考えるとじゃな……)


これらはすべて――

この領地に“もともと存在していた物”から作り出されたものばかりだ。


海には魚と昆布。

畑には豆と野菜。

沼地には水と土。

藁もある。菌もある。


(私は……)


「この領地には何の特産もない」


そう、勝手に思い込んでいただけではなかったのか――。

視線の先には、納豆ご飯を幸せそうにかき込む娘の姿。


「……メイヤ……」


私の娘は、“無い”のではなく、“見ていなかった”だけの価値を掘り起こしたのだ。


工夫し、組み合わせ、考え抜き、そして――ここまでの“食の体系”を作り上げた。


(我が娘ながら……)


「……とんでもない事をやっておる……」


だが、次の瞬間――領主の表情は、領主としてのものへと切り替わった。


■ 領主、即断即決


「ナルト!!」


調理師ナルトが、びしっと背筋を伸ばす。


「は、はい!」


「今ここにある――昆布出汁、味噌、醤油、糠漬け、どぶろく、納豆、八十八料理……すべての製法を、来ている機構の連中へ詳細に渡せ!!」


「……へ?」


「商品登録を行え! そして――」


領主は拳を握りしめた。


「新しいレシピが完成次第、すべて追加登録せよ!!」


その場が、しん……と静まり返る。


「さらには――」


領主は、はっきりと言い切った。


「領民にも公開だ!!秘匿など不要! 作れる者が増えれば、食も豊かになり、商いにもなる!」


ナルトは、目を見開いた。


「い、いいんですか!? ここまで一気に……!」


「構わん!!」


領主は、力強くうなずいた。


「これは――我が領の“食の武器”になる!!」


横でメイヤが、ぽかんとしている。


「……え、そんな大ごとに……?」


「大ごとじゃ!!!」


領主は即答した。


「これが“特産”でなくて何が特産だ!!」


■ 機構、大慌て。


その日のうちに、世界商品登録機構の出張員たちの机は――


書類、書類、書類、書類!!!


「昆布……? 出汁……?」


「味噌と醤油、製法が別……?」


「納豆……? これは…………?」


「どぶろく……? 米の酒……?」


軽くパニックである。


「ちょ、ちょっと待ってください……この領地、何種類登録する気ですか!?」


ナルトが淡々と言う。


「まだ増えます」


「まだ増えるんですか!?」


■ 領民へ、全面公開!


翌日――


村の広場に、“新料理・新製法 解放のお知らせ”という前代未聞の張り紙が並んだ。


「昆布を水に入れるだけで旨くなる!?」


「豆が……糸引いてる……?」


「この白い穀物……うまっ……!」


「味噌汁……毎日飲みたい……」


「ごはんに納豆……最初は臭いが……慣れたら止まらん……」


瞬く間に――領地が、和食に支配された。


朝は味噌汁。

昼は焼き魚。

夜は煮物と八十八。


気づけば、どの家からも――


「出汁の匂い」が漂い始めた。


■ メイヤだけが、ぽつり。


その光景を少し離れた丘の上から眺めながら、

メイヤはぽつりとつぶやいた。


「……え……?」


「私、ただ白ごはんが食べたかっただけなんだけど……」


背後から、父の声。


「それが文明になる娘じゃ」


「え、そんなつもりないです」


「もう遅い」


領地は今――完全に“和食文化圏”へと突入した。


次に王都へ流れ込むのは――間違いなく、この“異世界・和食ブーム”である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ