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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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試食会、開催。なお一部、異臭注意。

調理場――


調理師のナルトは、頭を抱えていた。


「……なんで……こんなことに……」


机の上には、紙、紙、紙。

びっしり積み上がったレシピの山。


昆布出汁。味噌。醤油。どぶろく。納豆。

糠漬け。


どれもこれも、これまで聞いたこともない調理法ばかりである。


「やり甲斐は……そりゃあるさ……あるんだけどさぁ……」


ナルトは天を仰ぐ。


「何でこんなもんを次から次へと思いつくんだよ……王都で流行ってたのか? それとも本でも読み漁ったのか……?」


だが、彼は知っている。


メイヤは王都に行く前から、すでに異常だった。


「それに……」


ふと、調理場の隅に置かれた木箱に目を向ける。


つい先ほどまで、あの木工師の爺様がここに来ていたのだ。


「“メイヤ様の言う通りに作れ”だとさ。あの爺さん……」


どこか、孫を見るような目をしていた。


「完全に身内じゃねえか……」


ナルトはため息をひとつつき、気合を入れ直した。


「……よし。全部、完成した。あとは――」


■ 試食会、開幕!


「領主様! メイヤ様! お料理の準備が整いました!」


広間にずらりと並べられた料理の数々。


・昆布出汁と醤油を使った各種煮物

・昆布そのものを煮込んだ昆布煮

・干した魚の焼き魚

・各種野菜の糠漬け

・味噌のスープ

・どぶろく

・炊きたての八十八(米)


そして――


最も異彩を放つ一皿。


「…………」


「…………」


「…………」


黒く、糸を引き、異臭を放つ謎の塊。


納豆である。


ナルトは小声でつぶやいた。


「……これだけは……不安しかない……」


■ まずは順調な和食無双


「では、まずはこちらから……」


最初に出されたのは、昆布出汁と醤油の煮物。


領主が口に運ぶ。


「……っ!? う、旨い……! 何じゃこの深い味は……!?」


メイヤはドヤ顔。


「でしょ? 出汁と醤油の合わせ技よ」


味噌のスープも大好評。


「優しい……胃に染みる……」


焼き魚も、糠漬けも、昆布煮も――


全て大成功。


どぶろくに至っては、


「……あ、甘い……そして……効く……」


領主の顔が赤くなり始めた。


「すごい……和食、完全再現……」


メイヤは満足そうにうなずいた。


そして――


問題の皿が、ついに出された。


■ 納豆、降臨


「……最後に……こちらです……」


ナルトの声が、明らかに弱い。


皿が、静かに卓上へ置かれる。


――もわっ。


その瞬間、部屋に漂う異様な匂い。


領主「……?」


ガルド「……?」


ミュネ「……?」


メイヤだけが目を輝かせた。


「きたぁああああ!! 納豆ぉおおお!!」


「納豆……? それがこの……生物兵器ですか……?」


糸を引く黒い塊を見て、領主は本気で後ずさった。


「だ、大丈夫なのか、これ……!? 腐っておらぬか……!?」


「大丈夫! 腐ってない! “発酵”よ! 発酵!!」


メイヤは箸で豪快にかき混ぜ始めた。


ぐちゃ、ねば、ずるるるる。


「ほら見て! この糸!!」


「見るなああああああ!!」


側近が叫んだ。


ナルトは目を逸らしている。


「……俺は……止めたんだ……」


■ 地獄の試食


「さあ、食べてみて!」


「い、いや……これは……」


「はい、あーん!」


「強引すぎる!?」


領主、観念。


意を決して、ひと口。


「…………」


数秒の沈黙。


「…………」


さらに沈黙。


次の瞬間――


「!?」


顔が、ぐにゃっと歪んだ。


「ぬ、ぬるぬるする!? 口の中で暴れる!? 何だこの食感!? だが……」


領主の目が、見開かれる。


「……味は……意外と……悪くない……?」


「でしょ!? 醤油かけてご飯と一緒にいくと最強だから!」


メイヤは自分の茶碗に山盛り納豆ご飯を完成させ、豪快にかき込んだ。


「はぁ〜〜〜〜〜! この味!! 生き返るぅ〜〜〜!!」


「お嬢様!? 平然と……!?」


一方、ガルドは――


「無理です! 匂いで無理です!!」


完全敗北。


ナルトは遠くを見ながらつぶやいた。


「……試食会って……命懸けだったんだな……」


■ そして炊きたて八十八(米)


最後に出された白く輝くごはん。


「……これが……例の八十八か……」


一口。


「……うまい……」


全員が静かにうなずいた。


納豆という嵐の後の、静かな感動。


メイヤは、湯気立つごはんを見つめて、静かに微笑んだ。


「……やっと……ここまで来た……」


この世界に、

和食が――完全に根を下ろした瞬間だった。

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