表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/195

アグライア、開封即爆死



世界商品機構・本部最上階。


磨き上げられた大理石の床、天井から下がる魔導照明、壁一面を埋め尽くす魔法陣と書庫。

豪奢と実務が混在するその執務室の中央で、

総責任者――アグライア=ホルンベルグは、優雅に紅茶を傾けながら書類に目を通していた。


「……次の議題は、西方商路の関税問題でしたか。あら、まだ揉めてるのね……」


いつも通りの平穏な業務風景。

だが、それは唐突に破壊される。


「総責任者!至急、お届け物です!!」


扉を勢いよく開けて飛び込んできた部下は、顔面蒼白。

両手で抱えているのは――


封蝋付きの、超・厳重封筒。


ただの封筒ではない。

三重封印。最上位ランクの封書である。


アグライアの眉が、ぴくりと跳ねた。


「……この封印形式……まさか……」


部下がごくりと喉を鳴らす。


「差出人は……“R”とのみ……」


――ピシッ。


アグライアの手元で、紅茶のカップに細かなヒビが走った。


「……あの爺か」


ゆっくりとカップを置く。

動作は優雅だが、目は完全に警戒モードだった。


嫌な予感しかしない――

それが、長年“あの爺”と付き合ってきた女の本能だった。



封印解除


封筒の中から現れたのは――


・分厚い手紙:一通

・精密な図面:十数枚

・謎の追加資料:さらに数束


量がおかしい。


アグライアは、覚悟を決めたように一枚目の手紙を開いた。



一行目


「あの子が、本気を出し始めた。悪気は無い」


「……でしょうね」


アグライアは即答した。


悪気が無いからこそ、なおさら危険なのだ。

嫌な予感が、確信に変わった瞬間だった。



二行目


「建築物を“規格化”し、素人でも組める構造に再設計」


「……は?」


アグライアの思考が一瞬停止した。


規格化。

それは“都市文明の量産スイッチ”である。



三行目


「地図を“版画化”し、用途別に複製可能な運用を開始」


「……ちょっと待ちなさい?」


情報共有の革命が、もう始まっている。



四行目


「昆布出汁、味噌、醤油、順次導入予定」


「………そもそもこれは何かしら?」


理解が追いつかない。


アグライアの手が止まり、視線が宙を泳ぐ。


部下が恐る恐る声をかける。


「あ、あの……?」


アグライアは震える声で言った。


「……この手紙……“文明パッチノート”かしら……?」



さらに追撃(図面地獄)


一枚目。


「……水田の構造、改良型……?」


二枚目。


「……規格倉庫……?」


三枚目。


「……乾燥棚の大量生産ライン……?」


四枚目。


「……穀物加工の“流れ作業”……?」


五枚目。


「……都市設計の“グリッド配置”……?」


一枚、また一枚とめくるたびに、

アグライアの顔色は、青 → 白 → 灰色 → 無の境地へと変化していく。


「……ちょっと……待ちなさい……」


震える指で図面を机に広げながら、かすれ声。


「これ……一領地でやる規模じゃないわよ……」


国家だ。

いや、すでに“文明単位”である。



そして、最後の一文


「なお、全てメイヤ様の“思いつき”です。それに、手紙が届く頃にはさらに増えています」


「――――っ!!」


次の瞬間。


「ブフォォォォォォッ!!!」


アグライアは盛大に紅茶を噴き出し、

そのまま椅子ごと後方へ転倒した。


書類が舞い、図面が宙を飛び、

世界商品機構・最高責任者は床に転がった。


「……あの子……」


「商品登録どころか……文明そのものを……量産する気……?」


部下が震え声で問いかける。


「ど、どうしますか……?」


床に転がったまま、アグライアは、ゆっくりと上体を起こし――

その目だけが、異様なまでに輝いていた。


「……決まってるでしょう……」


「全力で囲い込みなさい」


「世界商品機構の未来が――」


「今、あの子の手の中にあるわ」



その頃、遥か西の領地――


「くしゃみ出た……」


メイヤは、なぜか納豆用の藁を抱えながら首をかしげていた。


文明が震えているとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ