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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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乾燥昆布、降臨!

乾燥した風が屋敷の裏庭を吹き抜ける中——。


「お嬢様ぁ〜!これ、漁村から届きました!」


荷馬車の上には、黒々とした板状の物体が山のように積み上げられていた。

そう、乾燥昆布である。


「きたぁあああ!!乾燥昆布ぅうう!!」


メイヤのテンションは一瞬で天井知らずに跳ね上がった。


干しただけなのにこの存在感。

厚みも文句なし。

前世の記憶がフルスロットルで蘇る。


「これで出汁が取れる!文明レベルが一段階アップよ!!」


屋敷の使用人たちは意味が分からず、とりあえず拍手だけしていた。


■ 調理場へダッシュ!


「ミュネー!調理師さーん!集まってー!」


メイヤは乾燥昆布を抱えたまま、ほぼ突撃する勢いで調理場へ突入した。


昆布を見たミュネと調理師の第一声は、見事に一致した。


「……お嬢様。それは……なんの“板”ですか?」


「燃料……では、ありませんよね?」


いやいやいや!!


「違う違う違う!!これ食べ物!!いや、正確には“飲み物の元”!!」


二人の頭の上には、くっきりと「?」が浮かんでいた。


メイヤは腕をまくる。


「いいから見てて!今から料理するから!」


と言っても、戻して煮るだけなんだけどね……


■ 昆布出汁の衝撃


桶に水を張り、乾燥昆布を投入。


ぷかぁ〜、と黒い板が浮かぶ。


調理師「……本当に……食べ物、ですか……?」


ミュネ「……お嬢様、謎が増えている気がします……」


しばらくすると、昆布はゆっくりと水を吸ってふくらみ始めた。


「ほら、戻ってきたでしょ?」


鍋に移され、弱火でコトコト。


やがて湯の色が、ほんのり黄金色へと変わっていく。


「できた!飲んでみて!」


二人は恐る恐る口をつけ——


「……!? んっ……!?」


「な、なんだこれは……!?」


驚きに目を見開く二人。


「塩も入れてないのに……深い……旨い……!」


「でしょう?」


メイヤは得意げに胸を張った。


「これが“昆布出汁”よ!」


「こ、こんな上品な旨味が……ただ干しただけで……!?」


「しかも出汁を取った後の昆布も、刻んで煮付けたら普通に美味しいのよ」


二人の料理脳が、目に見えて高速回転を始めた。


「汁物、煮物……万能ではありませんか!」


「この出汁があれば……新しい料理がいくつも……!」


「必要なら漁村に追加で注文していいわよ。干すだけだから手間も少ないしね!」


二人は力強くうなずいた。


■ 味噌と醤油、ついに導入!


「はい、これ」


メイヤは紙を差し出した。


「味噌と醤油の作り方メモ!」


調理師「み、味……噌……?」


ミュネ「……しょーゆ……?」


「この二つはね……料理の神よ!!」


調理師はメモを見つめ、額にうっすら汗をにじませる。


「……発酵……熟成……これは……相当な大仕事ですぞ……?」


「やって。ここで再現して」


「……よろしい。やってみせましょう!」


調理師の目に職人の炎が宿った。


「あとは任せたー!」


メイヤは満足そうに調理場を後にした。


■ そして……ロウガの所へ!


昆布は完成、味噌、醤油が出来る予定だから。

 

「ロウガさん!!いるー!?」


ドン!と勢いよく扉を開ける。


「おう。どうした?妙に元気だな」


メイヤは拳を握りしめた。


「……また新しい食材か?」


「もし新しい食材が完成したら、売れるかどうか見てほしいの!」


「おう!解った!」


ロウガは気軽に請け負ったが、メイヤの胸の高鳴りは止まらない。


絶対に……この領地で、おいしい白米食べてやるんだからぁああ!!

実はメイヤが王都に行っている間も、

領内ではすでに変化が始まっていた。


かつての湿地、誰からも見向きもされなかった沼地の一部が、静かに、しかし着実に開墾されていたのだ。


水を引き、泥をならし、そしてそこには——


八十八(米)が植えられていた。


「みんな……ちゃんと世話してくれてたのね……」


穂が実るその日を思い浮かべて、メイヤは思わずにやけた。


ごはん。

白くて、湯気の立つ、あの一杯。


それがこの世界で食べられる日も、もう遠くない。

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