メイヤ、領地の構造改革を思いつく
「……うーむ」
朝の執務室。
メイヤは、机に広げた紙を前にして腕を組んで唸っていた。
その横を通りかかったメイドが、思わず二度見したほどの真剣顔だ。
(これは……また変なものを思いついた顔……!逃げよ……)
メイドは即座に方向転換して退散した。
メイヤの脳内は、いま大混乱中である。
■ メイヤ、領地の実情をようやく理解し始める
「……私、気づいてしまったわ……」
ぽつりと呟く。
「この領地……私、全然把握してない……!」
パンッと机を叩く。
土地の位置関係も曖昧。
集落がどこにあるのかも知らない。
川が何本あって、どれが村の水源なのかも分からない。
(いや……さすがにこれはまずいでしょ……)
前世では完全に一般人。
地理なんて地図アプリに丸投げだった。
だから今、リアル地図なし世界で苦しんでいた。
「うん、これは……まず“現地調査”を繰り返すしかないわね!」
決意した。
が。
次の瞬間、腰がギクッとなる。いくら若くなったとはいえこの小さな身体じゃ響くわね。
「……でも荷馬車が地獄なのよね……!」
昨日の揺れがまだ尾を引いている。
ゴトンッ!バインッ!ズシャァッ!!
(うっ……思い出すだけで背骨が軋む……)
前世の知識でサスペンションを作らせる案が頭をよぎるが、鉄工?技術が追いつく気がしない。
「まぁ、それは後で考えるとして……」
ひとまず、調査は学術員を頼ることにした。
■ メイヤ、領地運営の“組織化”を思いつく
ふとメイヤは思う。
(私ひとりで全部やってたら、確実に死ぬ……)
そこで机に紙を引き寄せ、ペンを走らせた。
「この領地の“意思決定の流れ”を……ちゃんと整理しないと!」
そしてできた図がこちら。
私(発案、改善、陳情?)
↓↑
ガルド(提出書類の確認・指摘)
↓↑
領主=お父様(最終決定)
↓↑
私(発案、改善、陳情?)⇆各担当部門へ指示
じぃぃぃぃと見つめる。
「……うん、これ、まともな組織の流れじゃない?」
メイヤは満足げにうなずいた。
「だって、全部私に聞かれても困るし!!みんな混乱するでしょ!?“あのちっこい子に聞け”みたいな状態になるじゃない!」
すでに領民の間では、
「何かあったらお嬢様の所に相談しろ」
「お嬢様が何とかしてくれるらしい」
という風潮が生まれつつあるのを感じていた。
「そんなの無理よ!!私、細胞分裂しないんだから!!!」
机をバンバン叩きながら叫ぶ。
だからこそ――
「この“仕組み”を文書化して、お父様に提出しよう!」
ガルドにも渡して、正式な“領地の運営体制”にするつもりだ。
整理すると、少し気が楽になった。
(よし、私は“発案”と“改善”と“面倒ごと相談窓口”くらいでいいわ!)
最後の項目だけ重すぎる気もしたがスルーする。
■ まずは学術員の進捗確認へ!
「問題は……領地の把握ね」
メイヤは立ち上がった。
「学術員の皆さん、私よりよっぽど歩いてるわよね……?」
道中で荷物が増えに増えた学術員たちの姿を思い出す。
(あの人たち、採集のプロよね……。うちの領地、何か“使えるもの”が落ちてるかもしれないし!)
「何をどこまで調べてるのか……今すぐ聞いてくるわ!」
勢いよく部屋を飛び出す。
が。
三歩目で――
「……いッ……!」
腰にビキッと痛みが走った。
「い、痛たたた……!!昨日の荷馬車の揺れがまだ残ってる……!!」
壁に手をつきながら、ゆっくり歩き始める。
(大丈夫……私は元経営者の女……!この程度で……負けるわけにはいかない……!)
全身プルプルさせながら廊下を進むメイヤ。
その姿は、まるで修行明けの武道家のようだった。
■ こうしてメイヤの“領地把握作戦”が始まる
まずは学術員たちから現地調査の進行度を聞き出し、そのデータを元に領地の全体像をまとめる。
「これからの改革の土台は“地理の理解”よ!」
気合を入れつつ、腰はまだギクギクしている。
メイヤの本格的な領地改革は――
ようやく組織的な第一歩を踏み出そうとしていた。




