メイヤ揺れる!アグライア様吹き出す!ため息2人の隊長!
「……はぁ……腰が……」
荷馬車から降りたメイヤは、地面についた瞬間その場で四つん這いになった。
揺れる!跳ねる!また揺れる!!
まるで拷問器具の試乗会である。
「やっぱり……道が悪いとこうなるのね……王都往復のときも思ったけど……今日は特にひどい……!」
ゴトンッ!バインッ!ズシャァッ!
さっきまでの振動が脳内でリフレインしている。
メイヤは、ぼーっと前世の記憶をたどる。
(確か……板ばねサスペンション……だったわね……。次男が整備士だったから、なんか鉄の板を束ねてどうにかこうにかって……言ってたような……サスペンションの仕組みをド忘れしつつ、でもまぁ、そのうち作ってもらおう)
と決めた。
未来の私がなんとかする。知らんけど。
一方その頃・王都――
世界商品登録機構・総責任者
アグライア=ホルンベルグの優雅なティータイム。
本日も超高級紅茶を片手に優雅に書類を処理していた。
そこへ、あの噂の貧乏男爵領からの報告書が届く。
「さて……次はどんな奇妙な商品が出てくるのかしらね……?」
ウキウキしながら封を切る。
読み始めて——
ぶぉんっ!!!!
「ぶはあああっっ!!?」
紅茶が盛大に吹き出した。
書類にはでっかくこう書いてあった。
――領民募集します!!!――
「……っ、あは、あははははははは!!!!」
アグライアは腹を抱えて笑った。
「ちっこいのの、仕業だね!?商品登録機構経由で領民募集!?前代未聞だよ!?誰も思いつかないよ!?あっはっはっは!」
笑いすぎて涙が出てきた。
しかし、落ち着いたアグライアの顔はにやりと笑う。
「ま、いいさ。うちが窓口になってやるよ。
なにせ、あのちっこいのが造った商品、王都でバカ売れしてるしね。今のタイミングなら……問題もないでしょ!」
紅茶をすすり直すアグライア。
しかしさっき吹き出した紅茶が机の上で小さな湖になっていた。
「……あとで拭いておこっと」
どこまでもマイペースである。
しっかし貧乏男爵家に居る木工師の爺さん。既に規格を統一運用してるって?
しかも私に対して国を動かせ?
私の事をババアなんて言うのは‥‥
鷹の目の様な目付き?
まさかあんたか?ロットよ?
流れ着いた先がそこかい?しかもこのタイミングでちっこいのと同じ領内に?住んでたのか。ククク!
同じく同時刻――国境付近・謎の会議開始
薄暗い森の手前、領地境界線ぎりぎりの場所。
機構軍隊長と近衛隊長ラウフェンは、腕を組んで難しい顔をしていた。
テーマはひとつ。
「防備どうする問題」
野盗のリアル
機構軍隊長が、指で地面をつつきながらぼそっと言った。
「野盗って言ってもよ……アイツらも“おまんま”食うために襲うんだぜ?だがよ……この領地襲ってもよ……」
言葉を濁した。近衛隊長が代わりに言う。
「……うん、食えないよな……。“貧乏領地”って逆に安全なんじゃないか……?」
2人は無言になった。
■ 驚愕の事実:兵力ほぼゼロ
「しかしまぁ……改めて確認したが……」
ラウフェンは頭を抱える。
「兵力が……ほぼ0だ。」
「0だな。」
「0……だな。」
「驚くほどの0だ。」
2人、しみじみ納得した。
■ 防備案:最低限すぎる門番
機構軍隊長が肩をすくめる。
「だからよ、ここに小屋でも建てて、おっさん3人ぐらい門番に立てときゃ終わりじゃねぇか?野盗も“あっ、なんもねえな”って引き返すだろ。」
近衛隊長もコクリとうなずく。
「いや本当に……それで十分なのが悲しい……」
ふいに機構軍隊長が立ち上がった。
「なぁ、ラウフェン。俺はよー……腹の探り合いとか駆け引きってのが大っ嫌いなんだわ。
面倒くせぇ。」
「お前が言うと説得力あるな……」
「だから腹割って話そうぜ?お互いどこまで情報握ってるか出し合って、その上で“いやこれ無理だろ”って部分は助け合った方が早ぇ。」
「……確かに。」
■ 情報共有の結果
1時間の濃密な情報交換の結果――
「……なるほどなぁ。」
「……そういうことだったのか。」
両名は深くうなずいた。
そして最後に同じ結論へとたどり着く。
「王様をたらし込んで……」
「うちのババア(=アグライア様)まで懐柔して……」
「……何なんだよ、あのちびっ子……」
「いや、もうなんか……人種が違う気がする……」
2人は遠い目をした。




