漁村でまさかの“宝の山”発見!?
メイヤは机に並べられた二つの植物――
丸いゴロゴロ (馬鈴薯) と、黄色い粒のぎっしり詰まったツブツブ (とうもろこし) を見つめ、
「ふふふ……ふっふっふ……ふぁーーっはっはっは!!!」
悪役令嬢の笑いを響かせていた。
「ついに!この世界の食料革命が始まるわ!!」
学術員(植物担当)は引きぎみに拍手をしていた。
が、すぐにメイヤは鉛筆を握り直し、冷静にメモする。
「でも……農業はすぐ結果が出ないのよねぇ……」
実に、前世日本人らしい現実的思考だった。
「種を増やすだけで一年はかかるわよね。
ここは学術員さんに任せて……私は別の食料調査をする!」
メイヤの視線がギラリと光る。
次にターゲットにしたのは――漁業。
「そういえば、うちの領地って漁村もあるんだよね。遠いのかな?」
メイヤはミュネを呼びつけた。
「徒歩で、約二時間ほどですね」
「うん、はい無理!!」
秒で切り捨てた。
「私の足じゃ泊まりがけになるわ。荷馬車借ります!」
「お嬢様の移動速度は……まぁ、その……」
「言いたいことは分かってる!!」
こうして、学術隊の空いている荷馬車を借り、ミュネと一緒に漁村に向かうことになった。
◆◇◆
■ そして到着――衝撃の事実
「……え?」
「はい、ここが漁村です」
家が。
三軒。
ぽつん……ぽつん……ぽつん。
村とは???
メイヤの口が半開きになった。
「え、えっと……ここ……“漁村”って言ったよね?」
「はい。漁村です」
「三世帯!?各国の“三大なんちゃら村”に喧嘩売ってるレベルで小さいんだけど!!」
でも、漁村はちゃんと漁村だった。
漁民たちに話を聞くと、
「取れるのは魚ですわい。村の方に持っていきますが……夏場は距離があっての、腐っちまうこともありましてな」
「そりゃそうよね……」
メイヤは頷きながらメモを取る。
(干物作れば解決じゃん!)
――と思った瞬間、気づいた。
『干物』という概念が、どうやら存在していない。
(よし、これは後でまとめて指示書に入れよう)
そんなときだった。
ふと視線を海辺に落とすと――
砂浜にヌルッとした黒い帯状の物体が山になっている。
「あれ……海藻?」
「はい。よく引っかかるらしく、みなさん捨ててしまうと」
メイヤはその海藻を持ち上げて目を見開いた。
「ちょ、待って……これ……これ、もしかして……真昆布じゃない!?」
厚み。長さ。色。
どう見ても高級品。
「ちょ、ちょっと!?これ、市場に出したら高級料亭が札束握りしめて走ってくるレベルよ!?!」
漁民「あぁ……邪魔なんで全部捨ててますが」
メイヤ「捨てるなーーー!!!」
メイヤは思わず漁民の肩を掴む。
「これは!ただ干すだけだから、今日から乾燥!乾燥したら全部!!全部私のところに持ってきて!!!」
漁民「は、はいぃぃぃ!!」
メイヤは砂浜に散乱する昆布を眺め、口元がニヤァ……と歪んだ。
(これで……出汁が取れる……!)
そう、ここからが食文化改革の第二波である。
「出汁が取れれば……煮物もできるし……昆布の佃煮も……はっ!」
メモを取りながら興奮は止まらない。
「そうだ!豆も取れるってことは味噌も作れる!!ということは、醤油もいける!!
あーーー!!夢広がるぅぅ!!」
「お嬢様、よだれが」
「――っ!?」
思わず拭いた。
だが、突然メイヤは遠くを見つめた。
「でも……やっぱり……」
胸の奥からこみ上げてきた言葉。
「米くいてぇぇぇぇぇ!!」
漁村にメイヤの叫びがこだました。




