ロウガ、求人広告に絶句する
メイヤは完成した紙束――いや、書類爆弾を抱えながら、村の商店へと突き進んだ。
「ロウガさーん!相談があります!!」
扉を開けると、ちょうど帳簿をつけていたロウガが肩をビクッと震わせた。
「お、お嬢様!? 朝からずいぶん景気の良い声で……な、なんですかその紙の山は」
「領地改革の第一歩です!!」
ドンッと机に紙束を置く。
ズシッ。
ロウガの眉が一瞬ピクリと跳ねた。
あまりの重さに、帳簿が“ポムッ”と変な音を立てて飛び上がった。
「……お嬢様。これは、紙の量としては“企画書”ではなく“遺書”に近いのですが」
「違います!希望の書です!」
メイヤは堂々と胸を張る。先ずは日雇いのを
日雇いは高い。
短期雇用は不安定。
しかし――長期契約なら現実的。
「ロウガさん、長期契約の話してたわよね。
じゃあ、うちは一年契約でどう?その後、仕事ぶりによって一年更新も可能……うん、これだ」
ロウガは眉間を押さえると、ひとまず上に乗っている大きな紙を取った。
そこには、メイヤ渾身の太字。
『只今領民募集中!!!!!』
「……お嬢様?」
「はい!」
「……これはその、王都の酒場の壁に貼るアレですか?」
メイヤ「そうです!求人広告です!」
「求人……広げ方が豪快すぎません!?」
ロウガは震える指で宣伝文句を読み上げる。
「“働く気のある貴方!!年齢不問!家族ごと移住歓迎!移住費は領地負担!”……」
ロウガは固まった。
完全に固まった。
メイヤは身を乗り出す。
「どうです?来たい人、絶対いますよね!?ね!?」
ロウガ「……い、いるとは思いますが……」
ロウガは紙を見つめ、口をパクパクさせた。
「これは……“人材争奪戦”を仕掛ける覚悟のある領主の書き方ですぞ……!?どこの大領地が出す広告かと思いましたわ……!」
「うちだよ!!」
「言い切ったぁーー!!」
ロウガは頭を抱えて店の奥に消えかけたが、すぐに戻ってきた。逃げるに逃げられないらしい。
■しかし、ロウガの反応が変わる
しかし最後まで読み終えたロウガは、ふっと息をつき、珍しく口元を緩めた。
「……ですが、お嬢様」
「うん?」
「“本気でこの領地を変えようとしている”気概だけは、ものすごく伝わってきました」
メイヤは目を丸くした。
ロウガは書類束を持ち直し、まっすぐ彼女を見る。
ロウガはピッと指を立てる。
「貼る前に、まずは“領主様の許可”が必須です。この内容は……お嬢様の暴走に見えて、実は領主の一大決断ですからな」
「暴走って言ったよね今?」
「気のせいです」
「絶対言ったよね?」
ロウガはとぼけながら書類を丁寧に整え、メイヤに返した。
「それでは、お嬢様。まずは領主様――お父上に提出するのがよろしいかと。恐らく……倒れられます」
「倒れる前に説得する!!」
「それならこの件私が領主様とお話ししてもよろしいか?」
「はい!協力お願いします」
扉がバンッと閉まり、静寂が戻る。
ロウガは机に突っ伏した。
「……お嬢様、本気でこの領地を大領地にするおつもりか……恐ろしい子……」




