表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/197

ロウガへの相談

メイヤは父との会談を終えると、迷うことなく領内の商店街へ向かった。

目指すは──あの豪快な商人、ロウガだ。


店の前には今日も荷車が並び、木箱が積み上がり、取引の声が飛び交っている。メイヤが店に入ると、店員が驚いた顔で会釈した。


「ロ、ロウガ様をお呼びします!」


「いるなら呼ばなくてもいいけど……」


そう呟いた瞬間──


「おう、嬢ちゃん。来ると思ってたぜ」


奥の帳場から、ロウガが豪快に笑いながら姿を現した。


「また何か企んでんだろ?」


「企むって……そ、そんなことないです!」


「はいはい。で、今度は何だ?」


ロウガはどっかり椅子に座り、メイヤに向かい合う席を指した。


メイヤはゴアゴア紙のメモ板を抱えたまま、真剣な顔で切り出した。


「ロウガさん、人って……呼べますか?」


「……人?」


「はい!領地の人口が、そもそも圧倒的に足りなくて……」


ロウガは眉をひそめた。


「何だ、その重大な話をさらっと言いやがる……。で、どういう意味だ?」


メイヤは、領地人口が二百名強であること、農地が開拓しきれないこと、産業を興すにも人手が足りないことなどを説明した。


ロウガは途中で「まじかよ」と何度も頭を抱えた。


「……嬢ちゃんの領地、思ってたより“軽い”な……」


「言わないで……心にくるから……」


ふたりでしばし沈黙したあと、メイヤは身を乗り出した。


「だから!ロウガさんに聞こうと思って。

日雇いの人って、この領地に呼べますか?」


ロウガは腕を組み、深く息を吐いた。


「……呼べるには呼べる。だが嬢ちゃん、この場所は“半島の端”。街道の本線からは外れてる。つまり──」


「高いんですね?」


「ああ。旅費と宿代で、人件費は王都の倍はかかるな」


「倍っ!?」


ロウガは苦笑しつつ続けた。


「ただし、長期契約なら話は別だ。三ヶ月、半年の“季節契約”ならコストを抑えられる。問題は……嬢ちゃんの領地が『仕事を継続して供給できるか』だ」


メイヤは迷わず頷いた。


「木工場建設、紙の工房、湿地開拓、筆記具の大量生産……仕事、めっちゃあります!」


「ははっ! 言うねぇ。だが……」


ロウガはじっとメイヤの顔を見る。


「嬢ちゃん、金はあるのか?」


「ないと思います!!」


「いやあるだろ!? 紙と鉛筆の出来でどれだけ売れたと思ってんだ!」


メイヤは本気で知らない顔をした。


ロウガは頭を抱えた。


「……あの旦那、嬢ちゃんに全然言ってねぇのか……」


彼は深いため息をつき、それから声を落とした。


「まあいい。次に、“教会の保護下の連中”を移住させる方法だが……」


メイヤは食い気味に身を乗り出す。


「そこ!気になってました!」


ロウガは数珠をいじりながら言った。


「方法はある。だが、前提として“領主同士の合意”が必要だ」


「合意……」


「教会はあくまで“預かってるだけ”だ。生活基盤──住む場所、仕事、食い扶持。これを揃えて提示すりゃ、教会は動く。ただし……」


「ただし?」


「信者が減るから、教会は嫌がる。寄進や、将来の産物の提供で手打ちにするだろうな」


「……めんどくさっ」


「世の中は金と信用で回ってるからな。若嬢」


メイヤは紙に勢いよくメモをとった。


■日雇い:高い。長期契約なら現実的

■教会保護者の移住:可能。領主同士の合意+寄進

■人手不足:根本的問題


ロウガは椅子を軋ませ、ニヤリと笑った。


「嬢ちゃんよ。ここまで真剣に“人をどう集めるか”考えた子ども、初めて見たぞ」


メイヤは少し頬を赤くした。


「だって……人がいなきゃ、何もできないから」


「その通りだ」


ロウガはゆっくりと立ち上がり、帳場の棚から一枚の地図を取り出した。


「実はな──この辺りには“季節労働者が集まる場所”が三つある。そこに俺の商会が定期的に行っている」


「えっ……!」


「金と、未来の仕事を提示すれば、人間、どこにだって行く。嬢ちゃんの思ってるより、ずっと単純だ」


ロウガはニッと笑った。


「奴隷なんざ必要ねえよ。働く価値がある領地なら、人は勝手に集まるもんだ」


メイヤの胸が大きく鳴った。


この世界でも──

「働きたい場所」があれば、人は集まる。


それは前世で知っていた、当たり前の真理だった。


ロウガは続ける。


「嬢ちゃん。本気で人を集める気なら、手伝ってやるよ。でもちゃんと領主様に確認しろよ」


「……いいんですか?」


「面白いからな」


即答だった。


メイヤは大きく頭を下げた。


「ロウガさん、お願いします!」


「任せときな。まずは条件作りだ。住まい、食事、賃金……嬢ちゃんの領地で全部用意できるように、これからが本番だぞ?」


「はいっ!」


店を出るメイヤの足取りは軽かった。


この領地が変わるための、

最初の“大きな一歩”が、今まさに動き出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ