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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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動き出す“日常”とメイヤの疑問

クラスメイト達が領主館へ到着したその夜。

ミュネは腕をまくり、見たこともない速さで厨房を支配した。


「ほれほれ、そこ持って動かさんか!鍋はそっち!肉は切りすぎるなって言っておろうが!」


気づけばクラスメイト二十名は、誰一人文句も言わずにミュネの指示に従っていた。

近衛の隊長でも敵わない“ミュネ支配圏”がここに展開されていた。


そして――夕食。


「うまっ……なにこれ……!」


「こんなボリューム、学園じゃ絶対出ないわよ……!」


「俺、ここ住みたい……」


ミュネは照れくさそうに鼻を鳴らしつつ、


「ほれ、たんと食え。痩せすぎじゃぞ」


と、彼らの皿に次々と料理を盛り付けていった。


その夜、学生達はふかふかのベッドに沈み込んだ。

移動・夜営の生活が続いていたため、全員が数秒で眠りに落ちた。


――翌朝。


いつもなら寝坊しがちな学生達が、誰一人遅刻せずに起きた。


理由は簡単だ。


体に“移動中の早朝訓練”が染みついてしまったからである。


「……気づいたら、体が勝手に起きてる……」


「ラウフェン隊長の朝訓練、マジで身体に刻まれてるよ……」


そんなことを言いながら、学生たちは領主館の庭でストレッチや素振りを始めていた。

ミュネが苦笑いしながら温かいお茶を振る舞う。


「ほれ、まずは体を起こせ。朝飯はすぐできる」


朝食はまだまだ豪華だった。

クラスメイト達は再び感動し、気合いの入った“いただきます”が領主館中に響いた。


食後、学生たちはそれぞれの興味に応じて散っていった。


土壌や植物を見たい学生。

村の生活を観察したい学生。

鍛冶場や木工を見てみたい学生。

リディアとミュネに手伝いを申し出る学生。


リディアは振り回されつつも楽しそうで、

ミュネは「はぁ?」と言いながらも受け入れていた。


――そして、メイヤはというと。


領主館の自室で机に向かっていた。

王都で買い込んだ書籍の山を前に、ページをめくりながらため息をつく。


「うーん……お金を稼がないとなぁ……」


鉛筆、ゴアゴア紙、委託製造(OEM)。

どれも上手くいけば収入になるのは分かっている。


でも――


「そもそも、この領地の人口ってどれくらいなんだろ……?」


メイヤは眉をひそめた。


「今まで、ちゃんと聞いたことなかった……」


(前世で言う状況調査かしらね)


王都では刺激が多すぎた。その勢いで「人材が足りない!」と叫んでいたが、冷静に考えてみれば基本情報が抜けている。


「地形は? 農地の範囲は? 資源は? 特産品は……あるの?」


実際、父やガルドが仕事の合間に話していたのを聞いていたはずなのに、思い返してみると自分は何も知らない。


メイヤは、はぁ……と天井を仰ぐ。


(……え、わたし、領主の娘なのに……何も知らなすぎ……?)


書籍のページには、領地運営の基礎がこう書かれている。


(領地運営も会社経営も同じ様な物だしね)


――まずは人口、地形、資源、土地の利用状況などの“現状把握”が最優先である。


「……やっぱり、知らないと駄目だよね」


メイヤは本を閉じた。


(お金の心配もあるし……)


本人は知らない。

父も母も、実は領地の金庫には“とんでもない額”が貯まっていることを――。


リディアには報告を受けていたが「メイヤには絶対言わないで」と両親が念押ししたため、メイヤだけ知らない。


だから本人だけが本気で悩んでいた。


「……よし。お父様に聞いてみよう」


椅子から立ち上がると、メイヤは勢いよく部屋を飛び出した。


ちょうど廊下を歩いていたリディアが声をかける。


「メイヤ、どこ行くの?」


「お父様を探してくる! 領地のこと、ちゃんと知らないと!」


リディアはくすりと笑った。


「やっと気づいたか。じゃあ行ってらっしゃい。報告、待ってるわよ?」


メイヤはうなずくと、ぱたぱたと走り去っていった。


(……さて、お父様はどこにいるんだろ?)


領主館の廊下を走り抜けながら、メイヤは心の中で呟く。


――わたし、もっとちゃんと知らなきゃ。


――この領地のことも。


――そして、自分の力で“何か”を動かす方法も。


胸の奥に、前世でも感じた燃えるような感覚がよみがえる。


(よし……聞けることは、全部聞く!)


メイヤは勢いそのまま、領主執務室へと向かっていった。

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