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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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初めて見た“答え”

セリアは、やけに明るい声で言った。


「さあさあ! ピクニックじゃないんだから、しゃんとしなさい!」


三人の女性は、思わず顔を見合わせる。


……ピクニック……?


どこをどう見ても、そんな雰囲気ではない。


その間に、まるで事前に段取りが決まっていたかのように、タルトと学術員が荷馬車の奥から物を運び出し始めた。


――鎧。


それも、新品ではない。前の戦で鹵獲した、旧ガリオン領兵が実際に装備していたものだ。


胸当て、兜、肩当て。

それらが距離を変えて、地面に次々と並べられていく。


「……」


リディアは、それを見た瞬間に察した。

これは……“何かやる”ただの訓練ではない。

わざわざここまで来て、実戦装備を並べる理由は一つしかない。

セリアは、全体を一度見渡すと、学術員に向き直った。


「準備は?」


「はい。問題ありません」


セリアは軽く頷き、宣言する。


「――では。今から、新兵器の試験を行います」


三人の女性が、一斉に息を呑んだ。


「まずは、手投げ弾です」


学術員は、片手に小さな筒状の物を持ち上げる。


「これは以前の戦いで、発火装置として使われた物を元にしています。その際に判明した欠点は――」


「細かい説明はいらないわ」


セリアが、ばっさり切った。


「使い方だけ」


「……はい」


学術員は一瞬姿勢を正し、淡々と説明を始める。


「まず、この紐を引きます」


紐が引かれ、軽い音と共に――

頭部のカバーが弾け飛んだ。


「次に、この突起部分を、鉄製の兜や硬い物に叩きつけます」


カン、と乾いた音。


「そこから――約五秒後に……」


学術員は、鎧が据えられた的に向かって、それを投げた。


――次の瞬間。


どっかん!!


地面が震え、空気が破裂する。


爆音。

砂埃。

衝撃波。


「――――!!」


誰も、声を出せなかった。


鎧に目を向けると、胸部、脇腹、関節部――致命部位に複数の破壊痕。


貫通ではない。

“内部から壊された”ような、凄惨な傷だった。


三人の女性は、完全に固まっていた。


……これが……


……守るための……


リディアも、無意識に喉を鳴らす。

セリアは、静かに頷いた。


「……実験は成功ね」


その声は、驚くほど落ち着いていた。


「じゃあ、次」


軽く手を叩く。


「新型火縄。予定通り、試験に入りましょう」


タルトが、ずしりとした物を持ち上げる。


それは、三人は見たことのない――

リディアは明らかに火縄だった。


誰もが理解する。


今日ここで見せられているのは、武器ではない。


この領地が、何を選んだかという“答え”だ。


そして三人は、もう後戻り出来ない場所に立っていることを――

はっきりと自覚し始めていた。



タルトは、肩に担いだそれを軽く叩いた。


「難しい話は省くぞ」


いつもの職人らしい、ぶっきらぼうな口調だ。


「これは新型の火縄じゃ」


火縄、と言いながら――その形は、明らかにこれまでの物と違っていた。


「クロスボウからもヒントを貰っとる。肩当て出来る様にな」


言いながら、肩に当てて構える。


「黒火薬を入れて……玉を入れる」


ごく簡単な動作。


「ほれ」


ボンッ!


乾いた、しかし重い破裂音。


数メートル先に置かれていた鎧に――

丸く、綺麗な穴が空いた。


貫通ではない。

撃ち抜いた、と表現するしかない穴だった。


「……!?」


思わず声を上げたのは、リディアだった。


「ちょっと待って……!」


視線が、銃口とタルトの手元を往復する。


「……何で?火縄が、無い……?」


そう。火は見えなかった。火縄に点火する仕草も無い。


タルトは、鼻で笑った。


「気づいたか」


そう言って、銃身の横を指で叩く。


「火縄は要らん」


「!?」


「代わりに、火打石を組み込んどる」


学術員が、補足するように続けた。


「引き金と同時に、火打石が火花を散らします。火縄の代わりです」


「……そんな事が……」


リディアは、呆然と呟く。

タルトは肩をすくめた。


「無敵じゃあないぞ」


現実的な声。


「雨の日はまた厳しいと思う。土砂降りや火打石が濡れすぎりゃ不発もある」


「じゃがな」


穴の空いた鎧を、ちらりと見る。


「普通の天気なら、火縄を気にする必要は無い」


その言葉が、ずしりと響いた。

三人の女性は、言葉を失っていた。


……これが……


……“準備”……


セリアは、満足そうに頷く。


「十分ね」


その一言で、全てが決まったかのようだった。


「これなら、守れる」


誰に向けた言葉でもない。


だがその場にいる全員が、この武器が意味するものを理解していた。


――もう、この領地は「何も出来ない側」ではない。


静かな空の下、新しい“力”が、確かに形になった瞬間だった。

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