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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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地図の外側へ

「……学術員さんと、タルトさんから?」


セリアは手紙を読み終え、指で軽く机を叩いた。


「思っていたより、ずいぶん早いわね……」


実験要請。

しかも内容を見れば、音も規模も小さく済む話ではない。


「場所選びが一番面倒、か」


窓の外を一瞥する。音が出る。人目に付く。

下手をすれば、噂が先に走る。


「誰にも、気付かれない場所……」


自然と、選択肢は一つに絞られていく。


「……ほぼ未開地、ね」


港とは真逆の海。

開発も測量も後回しにされ、地図すら曖昧な方向。


「徒歩で……二日くらい?荷馬車なら三日、ってところかしら」


少し考え、首を振る。


「……海まで行く必要はないわね。途中で十分」


そうなれば、名目は決まる。


「行軍訓練」


声に出した瞬間、それは“決定事項”になった。


「参加者は――あの三人に、リディア」


警備隊も数名、最低限。


「表向きは、ただの訓練」


だが実際には、実験の立ち会いであり、影の適性確認であり、そして――次の段階への一歩。


セリアは立ち上がる。


「さて……」


軽く背伸びをして、微笑んだ。


「招集、かけましょう」


地図に載らない場所へ。

誰にも知られない海の方角へ。


“影”は、また一段、深い場所へ進もうとしていた。


招集場所に集まった顔ぶれを見渡して、

リディアは、はっきりとした“引っ掛かり”を覚えていた。


……おかしい


行軍訓練。そう聞かされて、彼女が想定していたのは――警備隊の中でも足の揃った者、数名の熟練兵。


だが、実際に並んでいるのは。


お母様……?


セリアがいる。それは、まあ、もう慣れた。

この人がいる時点で、普通の訓練でない事は分かる。だが、それだけではない。


……館に住み始めた、あの三人


エルザ、ミレイナ、マリナ。

まだ訓練を始めたばかりの女性たち。


それに――


学術員さん? タルトさんまで?


鍛治士と学術員。

どう考えても、行軍訓練に同行する役割ではない。


警備隊数名が脇を固めてはいるが、全体の構成が、あまりにも歪だ。


……これは、訓練じゃない。


そう直感した。“訓練”という言葉は、ただの名目。外に向けた、薄い幕。


いったい……何を見せる気?

それとも、何を試すつもり……?


リディアは、視線をセリアに向けた。


セリアは、いつも通りの穏やかな顔で、

地図も持たず、進行方向を眺めている。


……聞かない方がいい、か?


長年の経験が、そう囁く。


知らされていない理由がある。そして、その理由は――“まだ、耐えられるか分からないから”。


リディアは、無言で腰の装備を確かめた。


行軍訓練。そう名付けられた何かが、これから始まる。そしてそれは、間違いなく、普通では終わらない。

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