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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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揺れる海と迫る影

ふっふ〜ん、ふっふ〜ん、ふん〜。


今日は港へ。

強襲揚陸艦の進捗状況を確認しに行く日。


「楽しみだなぁ〜。やっぱり船は良いわよね」


桟橋へ向かう足取りは軽い。

巨大な船体、組み上がる装甲、忙しく行き交う職人たち。


はぁ〜、と小さく息を吐く。


「本当なら、貨客船も造りたいところだけど……」


視線は海の向こう。


「雲行きが、ね」


平時なら夢物語で済んだ話。

だが今は――備えが優先だった。



一方その頃。


「はぁ……はぁ……」


「ちょ、ちょっと……まだ続くの……?」


三人の女性は、完全にバテていた。


背負わされた荷物は、約十キロ。

それを担いだまま、館の敷地内を延々と走らされている。


「……これ、訓練って言うより拷問じゃ……」


エルザがぼやいた、その瞬間。


ぴょん。


ぴょんぴょん。


目の前を、同じ装備を背負った領主の奥様――セリアが、軽やかに跳ね回っていた。


「はいはい、止まらない止まらない♪」


「……」


三人は顔を見合わせる。


「……重さ、同じですよね?」


確認するように、ミレイナが聞く。


「ええ、同じよ?」


あっさり。実際に持ち比べてみても、確かに同じ重さだった。


「……何なの、この人」


「化け物……?」


誰かが、心の声を漏らした。セリアは振り返り、にこりと笑う。


「大丈夫。慣れるわ」


全く、安心できない一言だった。



そして――アステリア。


港の事務所の一室に、厳重に梱包された箱が運び込まれていた。


箱と共に、一通の文。短い、簡潔な文字。


――いざとなったら、遠慮なく使いなさい。

――追加で二十。追って送る。


嫌な予感が、胸をよぎる。


箱を開ける。


中には、真新しい軍用クロスボウが二十基。

整然と並べられた矢束。数も十分すぎるほど。


「……これは」


側にいた者が、思わず呟く。


「姉御……そこまで、迫ってるって事か?」


アステリアは、文を静かに折り畳んだ。


港では船が造られ、館では“影”が鍛えられ、

そして――武器が集まり始めている。


まだ、表には何も出ていない。


だが確実に。


平穏の下で、次の波は――近づいていた。

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