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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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見える評価

メイヤの今現在のルーティンは、ぶらぶら。

――いや、正確には、朝食後の領内視察だった。


各工事の進捗、警備の配置、商いの動き。

一見気まぐれに歩いているようで、視線は常に情報を拾っている。


その後に、領主館へ戻って重要要件の確認。

それが、ここ最近の決まった流れだった。


その道中。


ふと、メイヤの足が止まる。


「……ん?」


領民なら誰でも目にすることが出来る、木製の掲示板。

張り替えられたばかりらしい紙が、風に揺れていた。


――――

領民の皆さんへ


領地に貢献した方に対し

領主より賞状ならびに

金一封を差し上げます。


発表日程:――――


「へぇ……」


思わず、声が漏れる。


「お父様のアイディアかしら?」


制度としては単純だ。

だが、“見える評価”は強い。


働いた者が、きちんと報われる。

しかもそれを、隠さず皆の前で示す。


「……うん」


小さく頷く。


「これなら、皆んな頑張るわよね」


誰かに命じられたわけでもない。

罰で縛るわけでもない。


それでも、人は動く。


メイヤは掲示板から視線を外し、再び歩き出した。


領地は、静かに――

しかし確実に、“回る仕組み”へと変わり始めていた。



発表当日。

初めての試みということもあり、領都の広場は朝からざわついていた。


屋台が出たわけでも、楽師がいるわけでもない。それでも人が集まり、自然と輪が出来る。


「何が始まるんだ?」


「領主様の発表らしいぞ」


そんな声があちこちから聞こえ、気付けば――ちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。


選ばれた者は、十名。

男性五名、女性五名。


名前が一人ずつ読み上げられ、前へ進み出る。


そして――女性五名


その五名の中には、例の三名が居た。そう。あの三名だった。


領主は、一人ひとりに目を向け、理由と功績を語る。


地味だが欠かせない仕事。

誰も見ていない所での工夫。

積み重ねてきた日々。


決して英雄譚ではない。

だが、確かに領地を支えてきた“仕事”だった。


賞状が渡され、続いて金一封。


その瞬間――広場に、自然と拍手が湧き起こる。


最初は遠慮がちだった音が、次第に大きくなり、やがて揃った拍手になる。


それを見ていたのは、領民だけではなかった。


「……何だ?」


「平民が、呼ばれてる?」


たまたま通りかかった商人。

別の領地から来ていた職人。

外部の人間も足を止め、様子を眺めている。


そして、浮かぶのは同じ疑問。


――領主が、わざわざ平民に?


不思議そうな眼差し。時には、戸惑いすら混じる視線。だが、拍手は止まらない。


その光景を、少し離れた場所からメイヤは見ていた。


「……うん」


小さく、しかし確かに。


この領地の空気が、また一段、変わったのを感じながら。

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