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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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共通の疑問

変装したセリアは、三人を一人ずつ部屋に訪れた。


同じ部屋。同じ距離。同じ、抑揚のない声で。


そして――

三人とも、ほぼ同じ問いを口にした。


「……拒否した場合は、どうなりますか?」


少しの沈黙。


セリアは、あっさりと答えた。


「簡単よ」


淡々と、事務的に。


「目隠しをして、領内のどこかに置いてくるだけ。今日のことは――“ちょっと不運な出来事に巻き込まれたなぁ”くらいで終わるわ」


拍子抜けするほど、軽い言い方だった。

だが、その軽さが、逆に重い。


「……もしその話を了承した、その後の待遇は?」


誰かが、慎重に尋ねる。セリアは、首を傾けた。


「それ以上は話せないわ」


即答だった。


「お互いにね、中途半端な状態で深入りするのは危険でしょう?ただ一つ言えるのは――悪いようにはしない、ってことだけ」


それ以上、何も付け加えない。


それが「限界」だと、誰にでも分かる態度だった。


三人は、心の中で同じ結論に辿り着く。


……確かに。ここで深掘りする方が、危ない。


再び、沈黙。


長くはないが、重い時間。やがて、三人とも小さく頷いた。


話を呑む。今はそれしか選べない。


セリアは、最後にこう告げた。


「これから、領内のどこかで解放するわ」


一瞬だけ、視線を走らせる。


「そして――こちらから、改めて声を掛ける。

それまで、待っていて」


命令ではないが扉が閉まる。


残されたのは、同じ疑問を抱えたままの三人と、まだ終わっていない話だけだった。


三人は、それぞれ別々の場所で解放された。


時間も、道も、見える景色も違う。

だが共通していたのは――

「何もなかった」かのような扱いだった。


そのうちの一人。

農家のバツイチ、エルザ。


「……は?」


気がつけば、自分の家の前に立っていた。


夕方。見慣れた戸口。干しかけの洗濯物も、そのまま。


視線を落とす。


――市場で買ったはずの品物。


籠の中身は、確かに自分が選んだ野菜だった。逃げる時投げ捨てたが。。だが。


「……こんなの、買った覚え……」


肉。


しかも、少し良い部位。この値段なら、今日は手を出さなかったはずのもの。


誰かが、わざわざここまで運んだ?

それとも――最初から?

頭の中で、考えがまとまらない。


「……一体、何なのよ……」


辺りを見回す。誰もいない。声をかけてくる者もいない。風が、少しだけ冷たい。


エルザは、深く息を吐いた。


「……はぁ……」


籠を持ち直す。


「まぁ……肉もタダで手に入ったことだし」


自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。


「……いい、のよね?」


答えは、返らない。

扉を開ける音だけが、静かな村に響いた。


――だが、胸の奥に残った違和感は、消えなかった。

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