共通の疑問
変装したセリアは、三人を一人ずつ部屋に訪れた。
同じ部屋。同じ距離。同じ、抑揚のない声で。
そして――
三人とも、ほぼ同じ問いを口にした。
「……拒否した場合は、どうなりますか?」
少しの沈黙。
セリアは、あっさりと答えた。
「簡単よ」
淡々と、事務的に。
「目隠しをして、領内のどこかに置いてくるだけ。今日のことは――“ちょっと不運な出来事に巻き込まれたなぁ”くらいで終わるわ」
拍子抜けするほど、軽い言い方だった。
だが、その軽さが、逆に重い。
「……もしその話を了承した、その後の待遇は?」
誰かが、慎重に尋ねる。セリアは、首を傾けた。
「それ以上は話せないわ」
即答だった。
「お互いにね、中途半端な状態で深入りするのは危険でしょう?ただ一つ言えるのは――悪いようにはしない、ってことだけ」
それ以上、何も付け加えない。
それが「限界」だと、誰にでも分かる態度だった。
三人は、心の中で同じ結論に辿り着く。
……確かに。ここで深掘りする方が、危ない。
再び、沈黙。
長くはないが、重い時間。やがて、三人とも小さく頷いた。
話を呑む。今はそれしか選べない。
セリアは、最後にこう告げた。
「これから、領内のどこかで解放するわ」
一瞬だけ、視線を走らせる。
「そして――こちらから、改めて声を掛ける。
それまで、待っていて」
命令ではないが扉が閉まる。
残されたのは、同じ疑問を抱えたままの三人と、まだ終わっていない話だけだった。
三人は、それぞれ別々の場所で解放された。
時間も、道も、見える景色も違う。
だが共通していたのは――
「何もなかった」かのような扱いだった。
そのうちの一人。
農家のバツイチ、エルザ。
「……は?」
気がつけば、自分の家の前に立っていた。
夕方。見慣れた戸口。干しかけの洗濯物も、そのまま。
視線を落とす。
――市場で買ったはずの品物。
籠の中身は、確かに自分が選んだ野菜だった。逃げる時投げ捨てたが。。だが。
「……こんなの、買った覚え……」
肉。
しかも、少し良い部位。この値段なら、今日は手を出さなかったはずのもの。
誰かが、わざわざここまで運んだ?
それとも――最初から?
頭の中で、考えがまとまらない。
「……一体、何なのよ……」
辺りを見回す。誰もいない。声をかけてくる者もいない。風が、少しだけ冷たい。
エルザは、深く息を吐いた。
「……はぁ……」
籠を持ち直す。
「まぁ……肉もタダで手に入ったことだし」
自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。
「……いい、のよね?」
答えは、返らない。
扉を開ける音だけが、静かな村に響いた。
――だが、胸の奥に残った違和感は、消えなかった。




