表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

356/384

選ばれる側は、まだ知らない

セリアは、領都の人混みから少し距離を取った場所に立っていた。

視線は柔らかく、だが確実に――三人の女性を追っている。


表情には出さないが、これは“面談”ではない。“観察”だ。


まず一人目。


飲食店の店員。名前は――ミレイナ。


昼の忙しい時間帯。客の流れ、厨房との連携、金の管理。全てをそつなくこなしながら、周囲をよく見ている。


(……視野が広い)


酔客にも慣れている。理不尽な要求にも感情を表に出さない。だが、引くところと引かないところの線ははっきりしている。


(二重帳簿とか、向いてそうね)


次。


農村部。二人目は、バツイチの農家。

名前は――エルザ。


土にまみれた手。無駄のない動き。

家畜と子ども、両方の世話を一人で回している。


(腹が据わってる)


視線が強い。何かを決める時、迷いが少ない。誰かに頼るより、自分で抱える癖がある。


(口が固いタイプ)


最後。


食品加工場勤務。三人目は――フローラ。


流れ作業の中で、微妙な不良品を見逃さない。上に報告するタイミングも的確。


(“気づく”人ね)


同僚との距離感も絶妙。深入りしない。

でも孤立もしない。


(情報を“流す”役には、かなり良い)


セリアは小さく息を吐いた。


「……中々、悪くないわね」


問題は――ここからだ。私が直接呼び出すのは……視線を細める。流石に不自然!


領主館への呼び出し。理由の説明。噂。


どれも、今は要らない。

セリアは、少しだけ口角を上げた。


「となると……」


仕事終わり。人目の少ない時間帯。


一人ずつ。


「――拉致るか」


声は、独り言に近い。


もちろん、本当に乱暴に扱う気はない。

ただ、選択肢を与える前に――

“安全な場所”へ連れて来るだけ。


逃げ道は、用意する。でも……

来たなら、戻れなくなる。


セリアは踵を返した。


三人の女性は、まだ知らない。


自分達が“選ばれた理由”も、この先で背負うものも。


ただ――

仕事を終えた帰り道が、少しだけ、いつもと違うだけだ。


フェルナード領の裏側は、今日も静かに、人を集め始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ