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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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日の光よりも危険なもの

奥の部屋の扉が閉まり、先ほどまでの張り詰めた空気が、ほんの少しだけ緩んだ。


椅子に深く腰掛けた最高責任者――

機構の人間が裏で“ババア”と呼ぶ女が、パナーを見て口角を上げる。


「あら。パナーじゃない?」


懐かしむような声。


「お久しぶり。……日の光はどお?」


パナーは肩をすくめた。


「日の光より、やばい家族達で干からびそうです」


一瞬の間。


「――――ワッハハハハ!!」


ババアは腹を抱えて大笑いした。


「相変わらずねぇ!あの女の“身内”に囲まれりゃ、そりゃ干物にもなるわ!」


笑い声が収まると、急に表情が切り替わる。


「で?」


一言だけ。


「“裏”を嗅いできたんでしょう?」


パナーは頷いた。


「はい。旧ガリオン領で嗅ぎました」


机の上に、簡単なメモを置く。


「表向きは没落貴族の資産整理。ですが裏では――」


淡々と話す。


「貴族筋の人間が、分散して出入りしてます。

名義は商人、従者、遠縁。でも金の動きが不自然すぎる」


ババアは指で机を叩く。


「現金化?」


「はい。宝飾、武具、書状。しかも“足がつかない”形で」


「……はぁ」


深いため息。


「失敗した側の典型ね。引き返せなくなった連中の動きだ」


パナーは続ける。


「機構の末端には、まだ情報は落ちてません。

ですが――」


一瞬、言葉を切る。


「“準備”は進んでます。人、金、物。特に、武器に近い物の動きが増えている」


ババアの目が細くなる。


「王都で派手に売り払ってる、って話も?」


「はい。セリア様の読み通りです」


その名を聞いた瞬間、ババアは小さく笑った。


「……やっぱり、あの女は早いわね」


椅子にもたれ、天井を見上げる。


「表で騒げば、裏は動く。裏が動けば、表は平気な顔をする」


視線を戻し、パナーを見る。


「で、あんたはどう思う?」


「――もう、始まってます」


即答だった。


「まだ刃は振るわれていませんが、選択肢は削られてる」


ババアは、満足そうに頷いた。


「良い答え」


そして、低い声で告げる。


「機構も動くわ。ただし――」


指を立てる。


「“まだ表には出ない”」


「……了解です」


「フェルナード側には?」


「備えに入っています」


「でしょうね」


ババアは立ち上がり、背を向けた。


「帰りなさい。日の光を浴びて、干からびない程度にね」


「努力します」


パナーは立ち上がり、軽く頭を下げる。

部屋を出る直前、背中越しに声が飛んだ。


「パナー」


「はい」


「伝えときな」


一瞬の間。


「――“家族が一番危険”だって」


パナーは苦笑しながら、扉を閉めた。


外は、やけに眩しかった。だが彼女は知っている。


この光の下で、もう既に――影は動き始めている。

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