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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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静かな軍需

その場に呼び出された職人達は、解散を告げられた後も、すぐには立ち上がらなかった。


誰もが、渡された紙と頭の中の設計図を見比べていた。


「……手で投げる、殺傷能力のある武器、か」


ロットが低く呟く。


「今までの竹筒は、威嚇や混乱用だったが……今回は違うな」


学術員も頷いた。


「爆発力を上げるとなると、火薬の配合と殻の素材を変える必要があります。下手をすると投げた側も危険になる」


タルトは腕を組み、別の点を見ていた。


「それより気になるのは、火縄の大型化だ」


紙に書かれた一文を指でなぞる。


「“二個の車輪を付けて、荷馬車や人が運び易い形”……これは、もう個人携行じゃねぇな」


「半固定兵器だな」


ロットが即座に答える。


「据えて撃つ。あるいは引いて移動する。城門や港、街道の要所向きだ」


その時、思い出した様に、セリアの言葉が脳裏をよぎる。


――製造は各自の工場で。

――実験場については、後日連絡するわ。

――もしくは、実験をしたくなったら、私に言って。


「……実験したくなったら、か」


タルトが苦笑した。


「普通は止める台詞だろ、それ」


「奥様は、“やる前提”で話してたな」


学術員が静かに言う。


「だからこそ、こちらも半端な物は出せない」


ロットは立ち上がり、深く息を吐いた。


「各自の工場でやるって事は、表向きは通常業務だ。余計な噂は立てるなって意味だろ」


「だな」


タルトも立ち上がる。


「そして、完成した時点で一気に揃える……そういう段取りか」


三人は顔を見合わせた。


誰も「やめよう」とは言わなかった。


「……俺は、車輪付き火縄の試作から入る」


タルトが言う。


「反動と安定性を考えないといけねぇ。下手すりゃひっくり返る」


「私は火薬の試験配合を数パターン用意します」


学術員が続く。


「殺傷力、破片の飛散、火の付け方、安全性……全部洗い直しですね」


「俺は、投擲用の外殻だな」


ロットが肩を回す。


「量産を考えるなら、木と金属の合わせ技だ。軽くて割れやすく、でも扱いやすい形を考える」


決まった。


誰かが号令をかけた訳でもない。


だが、それぞれが“やるべき事”を理解していた。


部屋を出る直前、ロットがぽつりと呟く。


「……これ、本当に“守る為”なんだよな」


タルトは振り返らずに答えた。


「守る為に作るから、守れるんだろ」


学術員は最後に静かに言った。


「準備しない者から、奪われる。それだけの話です」


その日、フェルナード領の各工場では、表向きはいつも通りの音が鳴り続けていた。


だがその裏で、戦を想定した“物作り”が、静かに始まっていた。

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