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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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もう始まっている戦

セリアは、次の一手に移っていた。


呼び出されたのは三名。

鍛治士のタルト、木工師のロット、そして黒火薬に関わった学術員。


領主館の一室。

揃った顔ぶれを見て、ロットが真っ先に口を開いた。


「奥様、どうしたんですか?珍しく直接呼び出すなんて……」


「そうじゃ!わしは今、船を作っとる最中だぞ〜!」


タルトも腕を組んで頷く。


「まぁまぁ、ロットさん」


セリアはにこりと微笑んだ。


「今日はね、とても“楽しい”お話をします」


「……そうなの!?」


不安と期待が入り混じった声が上がる。


「はい。まず――」


セリアは一枚の紙を置いた。


「ロットさんには、軍用クロスボウを五十基。仕様は以前と同じ、量産型で」


「……は?」


ロットの動きが止まる。


「次にタルトさん」


視線が移る。


「火縄銃を三十丁」


「……!?」


タルトは言葉を失った。


「そして学術員さん」


最後に向けられる視線。


「黒火薬の量産を命じます。品質は安定優先。量を確保してください」


「……!?」


三人の反応が、見事に揃う。


しばし沈黙。


そしてロットが、低い声で言った。


「おいおい……これ、完全に武装じゃ?」


タルトも眉をひそめる。


「奥様……まさか、戦争でも始める気か?」


セリアは首を横に振った。


「始めるつもりは、ないわ」


少し間を置き、続ける。


「でもね――既に始まっちゃってるみたいなのよ」


「……!?」


三人の空気が、一気に変わる。


「王都の動き、街道、港、金の流れ」


セリアは淡々と話す。


「表では“失敗”に見えるけど、裏では“準備”が進んでいる」


学術員が恐る恐る尋ねた。


「……つまり、こちらが狙われる可能性が?」


「ええ。可能性じゃないわ」


セリアは断言する。


「想定すべき段階に入っただけ」


そして新たな紙を置く。


「それともう一つ」


三人が身を乗り出す。


「王都で使った竹筒。あれを備蓄品にします。量産を。どうせ今作ってる船に載せるのでしょ?」


「……」


「はい。それに、手で投げる発火装置も。更に付け加えて…‥」


タルトが目を見開く。


「まさか……」


「ええ。殺傷能力を持たせた、新規品も必要です」


「それに更に加えて、あの火縄だけど大きく出来ない?」


重い沈黙。


ロットが、苦笑いを浮かべた。


「……奥様。こりゃ“備え”の量じゃねぇぞ」


「そうね」


セリアは静かに答える。


「でも、“足りない”よりはいいでしょう?」


誰も反論しなかった。


セリアは最後に、穏やかな声で言う。


「これは攻める為じゃない。守る為よ」


そして心の中で付け加える。


守れなければ、次は選ばされる。


フェルナード領は、まだ平和だ。

だが、その平和は――

準備をしている者にだけ許されるものだった。

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