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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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賽は投げられた

重たい扉が閉まる音が、地下室に低く響いた。


灯りは最低限。

集まっているのは、名のある家名を持ちながら、今や王都では肩身の狭い者達だった。


「……街道整備を失敗した責任を、すべて我らに押し付けるとはな」


一人が、苦々しく吐き捨てる。


「王は結果しか見ておらん。人も金も集まらなかった理由など、聞く耳を持たぬ」


「それだけではない」


別の男が、低い声で続けた。


「若い貴族を引き上げ、我らを切る。アステリアに街道を正式委任……」


沈黙が落ちる。誰もが理解していた。これは一時の不遇ではない。


排除だ。


「このままでは、爵位降格で終わらぬ。廃嫡、領地没収……家そのものが潰される」


そう言った男の手は、僅かに震えていた。


「……そこでだ」


部屋の奥から、今まで黙っていた人物が前に出た。


「“失敗”を、なかった事にする方法がある」


数人が、胡乱な目を向ける。


「言ってみろ。今更、街道が自然に完成する訳もあるまい」


「完成しなくていい」


その言葉に、空気が変わる。


「街道が“不要”になればいいのだ」


「何を……」


男は、静かに口角を上げた。


「フェルナード領が好景気に沸いている理由は何だ?」


「港だ。物流だ」


「そうだ。ならば、その“流れ”が止まれば?」


誰かが、はっと息を呑む。


「港が使えなくなれば、物は滞る。商人は逃げ、工場は止まり、街道整備どころではなくなる」


「……まさか」


「事故だ」


男は、淡々と言った。


「嵐。火災。暴動。原因など、いくらでも作れる」


「だが、それは――」


「王に逆らう事になる?」


遮るように、男は言った。


「いいや。“統治が行き届いていない領地”を示すだけだ」


沈黙。


それは、単なる言い訳ではなかった。

王の判断そのものを揺さぶる策だった。


「アステリアが失敗すれば、街道委任は白紙。

我らは“やはり必要だった存在”として戻れる」


誰かが、乾いた声で笑った。


「……戻れなかった場合は?」


男は、少しだけ目を細めた。


「その時は、さらに一段深い所へ行くだけだ」


もう、後戻りは出来ない。


ここで席を立てば、裏切り者。残れば、共犯。


「金はある」


男は、机の上に袋を置いた。

中で、硬貨が触れ合う音がした。


「人も、手配できる。名が付かぬ者を使えばいい」


誰も、否定しなかった。否定出来なかった。


「決まりだな」


そうして、最後の一人が頷いた瞬間。


彼らは理解していた。


これは“不満”ではない。

これは“反抗”ですらない。


国家に対する――静かな敵対行為だ。


賽は、既に投げられていた。

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