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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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二つの顔を持つ塔

領都の外れ――

少し中心から距離を置いた場所で、一本の塔が静かに姿を現し始めていた。


見張塔。それが正式な用途だ。


だが、それを知る者は少ない。


この塔は、フェルナード領で初、いやこの世界ではの鉄筋コンクリート製の建造物だった。石積みとも、木造とも違う質感。

無機質で、滑らかな壁面は、否応なく人の目を引く。


「何だあれは?」


「高いな……」


「新しい観光施設らしいぞ」


噂は、自然と広がっていった。

表向きの触れ込みは単純だ。


――領都とその周辺を一望できる展望塔。

風景を楽しめ、行商人や旅人にも人気が出るだろう、という説明。


実際、それは嘘ではない。


塔の上部には、確かに一般向けの展望スペースが設けられていた。階段も、案内板も整備され、誰でも利用できる造りになっている。


だが――それは“表の顔”に過ぎない。


塔の内部は、二重構造になっていた。

観光用の動線と軍用の動線。

壁一枚、床一枚で隔てられ、互いに交わることはない。


一見しただけでは、気付けない。

内部を案内されても、気付かせない。


意図的に、そう設計されていた。


軍用部分への入口は、同じ敷地内にありながら、完全に別。

そちらは展望塔の“付属施設”として扱われている建物だ。


表向きは、警備詰所。だが実態は、警備隊の待機場。


そこから直接、塔の軍用区画へと入ることが出来る。


軍用区画には、

・領境方向の監視設備

・港方面の視認ライン

・狼煙や信号を上げるための設備

・緊急時の連絡用導線


が、静かに組み込まれていた。


観光客の歓声のすぐ裏側で、領地を守る為の“目”が、常に開かれている。


「機能しないのが一番」


メイヤは、そう言っていた。


だが、機能しないまま終わる為にこそ、完璧に作る。


それが、この塔の存在理由だった。


工事は、予定通り着々と進んでいる。

誰も疑わず、誰も恐れず、誰も気付かぬまま。


フェルナード領は、今日も平和だ。


――少なくとも、今のところは。

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