表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

345/376

静かに積み上がる切り札

ひっそりと――

それは本当に、誰にも気づかれぬようにだった。


メイヤは、港の建設費を“もぎ取って”いた。

表向きの名目は、あくまで「将来を見据えた最低限の港湾整備」書類上も、規模は小さく、用途も曖昧。

恐らく、ロウル領の港と比べれば簡素なものになるだろう。


だが――それでも「今まで無かった物」だ。


それだけで十分だった。


建造予定の船の模型は、少しずつ形を整えつつあった。

技術者達の間では、半ば冗談めかして「鉄甲船みたいだな」と言われている。


確かに見た目だけを見れば、無骨で、重厚。

流麗さとは程遠い。

だが、メイヤが求めているのは“格好良さ”ではない。


求めているのは――確実に役目を果たす船だ。


・蒸気機関は、既存よりも出力を上げた二基構成

・浅瀬でも座礁しにくい船底形状

・荷馬車を直接載せ、迅速に降ろせる構造

・多少の被弾や荒天でも行動不能にならない頑丈さ


一つ一つは、決して奇抜ではない。

だが、それらを一隻にまとめると、自然と答えは一つになる。


――強襲揚陸艦。


「輸送が主で、戦闘は出来れば避けたい」


そう口では言っているが、この船の設計思想は、明らかに“最悪を想定している”。


戦う為ではない。

だが、戦いを避ける為には、戦える準備が必要だ。


メイヤはそれを理解していた。


港はまだ影も形もない。

船も、模型の段階に過ぎない。

だが、歯車は確実に噛み合い始めている。


見張塔。徴兵制。情報網。

そして――船。


これらは単体では意味を成さない。

だが繋がった時、フェルナード領は「守れる領地」へと変わる。


表向きは好景気。裏では静かな準備。


誰かが気づいた時には、もう後戻りは出来ないところまで進んでいる。


メイヤは、完成途中の模型を見下ろしながら、静かに息を吐いた。


「……使わずに済めば、それが一番なんだけどね」


そう呟きながらも、彼女の手は次の書類へと伸びていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ