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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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これは失敗するわね

街道整備区画・東部。


砂埃が舞い、所々に積まれたままの石材。

人影はまばらで、作業音もほとんど聞こえない。

アステリアは馬車を降り、無言で周囲を見渡した。


「……」


付き従う側近達も、自然と口数が減る。


「ここが……王都から港へ向かう主要街道、でしたよね?」


若い文官が恐る恐る確認する。


「ええ。予定ではもう半分以上終わっているはずの場所」


アステリアは、地面に転がる資材を足先で軽く蹴った。


「石材の規格がバラバラ。置き場の区分も無い。人の導線も考えられてない」


一度、深く息を吐く。


「これは……失敗するわね」


即断だった。


「え……?」


「というか、もう失敗してる」


視線を上げ、街道の先を見る。


「人が集まらない理由は明白よ。賃金が安い。

休憩所も無い。作業内容が日替わりで変わる」


「指示系統も……」


「ええ。命令が三重構造。現場責任者が責任を取れない構造になってる」


その時、慌てた様子で一団が駆け寄ってきた。


豪奢な服装。だが靴は汚れていない。


「お、お待ち下さい!わ、我が領が担当しておりまして――」


失敗貴族だった。


「視察ですか? ここは、ええ、少々遅れてはおりますが――」


アステリアは、相手を見ずに言った。


「少々?」


指で地面をなぞる。


「予定工期から、三割遅延。人員配置ミス。資材横流しの形跡あり」


貴族の顔色が変わる。


「よ、横流しなど――!」


「この石材、王都規格じゃないわよね?」


沈黙。


「それに……」


アステリアはようやく、相手を見る。


「あなた、自分の区画、今日初めて来たでしょ?」


完全に言葉を失った。

その場にいた文官が、一歩前へ出る。


「王命により、本日をもって――当該区画の実務権限は、全てアステリア様へ移譲されます」


「なっ……!」


「貴方は名目上の責任者として、今後は進捗報告のみ行って頂きます」


「そ、そんな……!」


アステリアは、冷静に告げた。


「安心して。“責任”はちゃんと残るから」


貴族は、何も言えなくなった。


その背中を見送りながら、側近が尋ねる。


「……厳しすぎませんか?」


「いいえ」


アステリアは街道を見据えたまま答えた。


「これ以上、人と金を無駄にする方が罪よ」


そして静かに続ける。


「ここは“罰”の場じゃない。“結果を出す場所”」


振り返り、指示を出す。


「まず休憩所を作る。賃金を標準以上に上げる。資材は全部洗い直し」


「指揮系統は?」


「一本化。現場責任者は“仕事が出来る人”に」


街道は、まだ未完成だ。


だがこの瞬間、確実に「やり直し」が始まった。

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