進む港、止まる街道
王都での港の復旧は、ほぼ終わりに近づいていた。
新型船の導入によって、木材男爵はこれまでにない量の木材を安定して供給できるようになったからだ。
その報告を受けたエドランは、素直に喜んだ。工期の大幅な短縮――それはそのまま支払い金額の削減を意味する。
国庫にとっても、これ以上ありがたい話はない。
この動きは、当然のように王の耳にも入っていた。王は、新型船だけでなく、それによって可能になった「新しい資材の流れ」そのものに強い関心を示していた。
港は、確実に再び動き出そうとしている。
――だが。
港の復旧が終盤に差し掛かるのと同時に、別の問題が浮き彫りになり始めていた。
街道整備を任されている一部の貴族達の進捗状況が、明らかに芳しくないのだ。
それも無理はなかった。
これまで手を抜き、名ばかりの指揮しかしてこなかった者達が、急に現場をまとめられるはずもない。
加えて、利益を多く得ようと人件費を抑えられている。結果として、人が集まらなかった。
王都では、港や周辺施設、倉庫、関連工事で大量の作業員が必要とされている。
賃金も条件も良い現場が、目と鼻の先にいくらでもある。
わざわざ、安く、管理も不十分な街道工事を選ぶ者など、いるはずがなかった。
進む港。止まる街道。
同じ「王命の事業」でありながら、そこには決定的な差が生まれていた。
それは、資金の差でも、規模の差でもない。
――人を動かせるかどうか、その違いだった。
この遅れが、何を意味するのか。
まだ多くの者は、気づいていない。
だが確実に、王都の中で
「できる者」と「できない者」
その線引きは、はっきりと形になり始めていた。




