海へ伸ばす手
船。結局、行き着く先はそこだった。
仮称・強襲揚陸艦。
元々はロウルの船体を急遽改造した代物だったけれど、今ではすっかり立派な輸送船として働いているらしい。
人も物も運べて、港の整備が追いつかない場所でも多少無理やり接岸できる。
便利過ぎるくらいだ。
噂では、他の船も似た仕様に改造され始めているとか。それを聞いて、思わずため息が出た。
一隻は、うちでも持っておきたいよね。
何かあれば、また王都。その距離を考えると、船が無いという選択肢は、もはや選択ですらない。漁民さん達を頼れば、最低限の移動は出来るだろう。でもそれは「出来なくはない」というだけで、「出来る」とは違う。
そもそも、船が無ければ話にならない。
小型船はある。でも、荒天や有事を考えると心許ない。
今までの船は、輸送が目的で、あとから戦仕様に寄せたもの。
今回考えているのは、その逆。
最初から――戦を想定した船。
その上で、輸送にも使える仕様。
つまり、前提は強襲揚陸艦。
船好きとしての感覚が、頭の中で形を結び始める。細かい数値は分からない。
でも、だいたいのシルエットなら浮かぶ。
どうせ今回も、私の雑な絵から始まるんだろうなぁ。そう思うと、少し笑ってしまった。
蒸気機関は、今使っているものより出力を一・五倍ほど。
それを二基搭載。
燃費は悪くなるだろうけど、力で押し切る設計。
速さよりも、止まらない事。
荒れていても、重くても、前に進む事。
そうすれば、ロウルへ渡した蒸気機関より、確実に力はある。
海路を「使う」ための船じゃない。
海路を「切り開く」ための船。
……問題は、これをどう説明するか、だよね。
でもまあ。
どうせ最初は、「何だこれは?」って顔をされるのがオチだ。
それでもいい。陸は、少しずつ備えが整ってきた。なら次は――海。
領地が、海へ手を伸ばす。
そんな予感を抱きながら、私は白紙に向かって、線を引き始めた。




