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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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伝わる王都のざわめき

近衛経由、そして機構を通じて、王都の動きが断片的に流れ込んでくる。

それは正式な通達ではなく、あくまで“空気”としての情報だった。


「なぁ……聞いたか?」


詰所の隅で、近衛の一人が低い声で切り出す。


「あー。聞いた」


向かいに座る男も、湯気の立つ茶を啜りながら頷いた。


「俺達の所にも、同じ情報が入って来たな」


「そうだな……」


言葉を濁しながらも、二人の間には共通認識があった。


――王都が、動いている。


「名前だけの古き貴族は、今ごろ浮き足立ってるだろうよ」


「違いねぇな」


机を指で叩きながら、もう一人が続ける。


「特に今回、兵も出さず、金も出さず、口だけで動かなかった奴等はな」


「……目立つからな」


再編。評価。結果主義。


それらの言葉が、王都の裏側で現実のものになりつつある。


「下手すると、また荒れないか?」


その問いに、すぐ答えは返らなかった。


しばしの沈黙の後。


「解らぬが……」


茶碗を置き、男は静かに言った。


「可能性はゼロじゃ無いな」



同じ頃、機構の一室でも同様の話が交わされていた。


「再編に備えた照会が増えているわ」


「古い登録の洗い直しも来てますね」


「今まで“問題なし”で通っていた領地ほど、慌ただしい」


記録官は淡々と書類を整理しながら、ぽつりと呟いた。


「……動かなかったツケ、ですか」


誰も否定しなかった。



そして、その情報は遠回りに、だが確実に――

メイヤの耳にも届く。


「王都、少し騒がしいみたいね」


報告を聞きながら、メイヤは軽く息を吐いた。


「近衛も、機構も、同じ様な空気を感じてる」


何かが壊れたわけじゃない。だが、何かが終わろうとしている。


「……まあ、なる様にしかならないか」


そう言って、彼女は次の資料に目を落とした。


嵐の前の、静かなざわめき。その波は、まだ遠いが――確実に、こちらへ向かって来ていた。


ふぅ〜……。

前回の戦いは、本当にギリギリだった。

勝てたのは事実だが、胸を張れる様な余裕の勝利ではない。


「次があったら……」


そう考えた瞬間、首を振る。考えたくはない。けれど、考えない訳にもいかない。


領民は、少しずつ、しかし確実に増えてきている。それは喜ばしい事だ。人が増え、活気が出て、街が広がる。


その一方で――守るものも、同じだけ増えている。


今は、領境と港。

お姉ちゃんが率いる警備隊が常駐してくれている。装備も悪くない。連携も取れている。


「でも……」


今の警備体制は、“備えている”だけだ。

奇襲や同時多発、あるいは予想外の方向から来られたら――正直、即応できるか怪しい。


また、もし。本当に、もしもだけど。


急だったら?情報が遅れたら?

港と領境が同時だったら?


……対応しきれないかもしれない。


「何か、考えないと……」


戦わずに済む仕組み。

遅れずに察知する仕組み。

動く前に、止められる何か。


力だけじゃない。数でもない。


“仕組み”だ。


そう思いながら、メイヤは机に広げた地図に視線を落とした。港、街道、領境、川。


まだ答えは出ない。けれど、考え始めた事自体が――次への第一歩なのだと、自分に言い聞かせた。

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