雪は厄介者にあらず
機構に確認した結果、「氷室」と呼べる施設は正式には存在しない――という事が判明した。
なら話は早い。
「じゃあ、登録申請をお願いします!」
その場で新規施設として申請。
名称は仮で「雪資源保管施設」。
説明文にはこう添えた。
冬季に大量に発生する雪を資源として保管し、夏季の食料保存、温度管理、生活向上に活用する。
次は土木だ。
私は、土木や地盤、地下構造に詳しそうな学術員さん達を、またまた一斉招集した。
「今回はね、厄介者扱いされてる雪を資源にしたいの」
そう前置きしてから、氷室のイメージと目的を説明する。
冬に集めた雪を、断熱した地下空間に大量に詰める。重要なのは――力を発揮するのが夏だという点。
「雪が溶けて、暑くなってからが本番なのよ」
学術員さん達は、「なるほど……」「理屈としては通るな……」と、顎に手を当てながら頷いていた。
そこへ、お母様。
「氷室……?それよりアイスクリームは作れるの?」
……やっぱり、そこに行くよね。
「作れる“可能性”はありますけど、最低でも雪が降らない事にはどうにもなりません」
そう説明すると、少し残念そうにしつつも、
「まあいいわ。氷室の建設自体は許可するわ」
と、あっさりゴーサイン。
こうして話は一気に具体化する。
場所の選定。地下か、半地下か。断熱構造はどうするか。
そして――規模。
「これは……実際に確保できる場所次第ね」
大きいものを一つ。中規模をいくつか。
それとも分散型か。
正解はまだ分からない。
でも、やってみなきゃ始まらない。
雪は、もう厄介者じゃない。未来の冷たさだ。私はそう思いながら、次の書類にサインを入れた。
学術員さん達の検討の結果、地下施設として建設する事に決まった。
「本当なら、天然の洞窟があれば理想だったんですが……」
そう言われて、私は内心で頷く。
確かに洞窟なら掘削の手間も減るし、温度も安定しやすい。
でも――そんな都合の良い物は、この領地には無かった。
「となると、地下よね」
地盤の安定した場所を選び、土圧と排水を考慮した構造。壁材には例のコンクリを使用する案も出た。
場所は、領都から極端に離れ過ぎない地点。
冬に雪を運び込み、夏に食料や飲料を運び出す。
その動線を考えると、近すぎても邪魔になるし、遠すぎると使われなくなる。
「“使われる施設”にするのが一番大事ですから」
学術員さんのその一言で、全員が納得した。
結果、領都から程よい距離。
馬車でも無理なく往復できる場所に決定。
設計図には、
・雪を詰め込む主室
・溶け水を逃がす排水路
・作業用の通路
・将来的な拡張スペース
……まで、しっかり描き込まれていた。
「最初は実験規模で」
そう前置きしつつも、どこか皆の目が本気なのが分かる。雪を保存するだけの施設。
でも、上手くいけば――
夏でも冷たい飲み物が飲めて、食材が長く持って、アイスクリームだって夢じゃない。
「ふふ……」
私は、まだ誰も見た事のない“夏の冷たさ”を思い浮かべて、ちょっとだけ笑ってしまった。




