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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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静かな卓で交わされる決断

王都郊外にある、少し奥まった場所のレストラン。

その一室に、三家の男爵が顔を揃えていた。


「で? 如何だった?」


最初に口を開いたのは畜産男爵だった。


木材男爵が腕を組み、静かに息を吐く。


「あの領地で見た蒸気機関だ。木材を切る機械……正直、度肝を抜かれたよ。あれがあれば、加工時間は一気に短縮できる。いや、それだけじゃない。植林のやり方も見事だ。欲しい。……苗木ごとな」


次に農業男爵の執事が一礼して話し始める。


「農業技術そのものは、正直に言えば我が領の方が蓄積はあります。ですが、あの領地は“効率化”が異常です。人と物の流れ、道具の使い方。あの荷馬車も含め、導入できれば生産力は確実に跳ね上がるでしょう」


畜産男爵は頷いた。


「うちも同じよ。もう知ってると思うけど、二名向こうに派遣したわ。それに追加で人を送り込む予定」


「うちもだ」


「我が領も同様です」


短いやり取りの中で、三家の意思はすでに揃っていた。


「ここに居る三家が、あそこと手を結ぶのは良い判断だと思うわ。お互いにね」


畜産男爵はそう前置きしてから、少し声を落とす。


「ただし問題もある。正式な御触れはまだだけど、向こうは子爵になったらしい。こちらは男爵。所詮は下同士よ。いくら上が減ったとはいえ、どこから圧力が来るか分からない」


一拍置いて、続ける。


「それに……私の同級生が、あそこに居たのよ。エドラン家の娘」


「エドラン家が? 何故?」


「さあ。そこがよく分からない。でも、繋がりがあるのは確実ね。隣領だし」


「庇護下にあるのか?」


「それも違和感があるわ。元男爵の領地に、エドラン家が娘を出す?……逆ならまだ分かるけど」


沈黙が落ちた後、畜産男爵が視線を上げた。


「そこで提案よ。ロウル家の下につかない?」


「ロウル家……辺境伯か」


「そう。勿論、エドラン家と敵対するつもりは無いわ。ロウル家もエドラン家から王都港の再建を受けてるでしょ?」


木材男爵が頷く。


「俺も資材と人員を出してる。ロウル家からの依頼だ」


「でしょ? 海路なら私達の方がエドラン家より近い。それに貴族再編成の噂も出てる。だったら先に、互いにプラスになる相手と結び付きを強めておくべきよ」


しばらく考え込んだ後、木材男爵が笑った。


「成る程な……よし、俺は乗ったぞ」


「では、我が領も」


「同意します」


畜産男爵はグラスを置き、立ち上がった。


「解ったわ。じゃあ、アステリア様に話を通しに行きましょう」


静かな一室で交わされたその決断は、やがて大きな流れとなって表に現れることになる――。



「アステリア様は居ますか?」


「ちょっと待ってくれ! あねさーん!」


奥から足音がして、聞き慣れた声が返ってくる。


「おう! 何だ? 見て来たか?」


「ええ。三家とも、しっかり見て来たわ。その上で、一つ答えを出した」


畜産男爵は一歩前に出て、はっきり告げた。


「私達三家は、貴女の下につく事にしたわ!」


「ほぅ〜……」


アステリアは一瞬だけ間を置き、それから肩をすくめる。


「まあ、俺は構わないぞ!」


「あっさりしてるわね……」


「というわけで宜しくね! それと我領の紫石の件だけど……広大過ぎて、まだ不明よ」


「何だ。まだ調べきれてないのか……」


「じゃあ言い方変えるわ。紫石を含んだ山が三つ以上あって、調べきれてないって言えば良いかしら?」


「ははは! そうか! そうか!」


アステリアは腹を抱えて笑った。


「じゃあまず、こっちでの備蓄分が欲しい所だが……その前にだ。新型船が出来たんでな、その船で三家と王都を結ぶ海路を開く」


「……え?」


「そっちの港をまず見せて貰う。必要なら改修だ」


畜産男爵は眉を寄せる。


「ちょっと待って。今ここに来てる船なら、何処も入れないわよ?」


「あー、違う方の船だ。恐らくそれなら入れる……が、まずは港を見て判断だな。必要なら浮桟橋を持ってくる」


「……あー。あれ、そういう名前なのね」


「便利だぞ? 一度使うと戻れん」


物流、港、海路。

話は自然と次の段階へ進み始めていた。

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