川が答えを出した日
「んー……学術員さん呼んできて!お魚に詳しい人を!」
「はい!」
しばらくして、息を切らした人物が駆けてくる。
「はぁ、はぁ……い、如何しました?」
「いいから川を見て!」
言われるまま川面を覗き込んだ瞬間、学術員の目が見開かれた。
「これは……ニジニジ魚ですな!しかも、かなり大きく育ってる……」
「やっぱり!」
「普通はここまでの密度にはならない筈ですが……水温が高い?それに餌も豊富……」
「これって、養殖できる?」
「んー……確か、確かですが……地方によっては養殖されていた記録があります!」
「そのやり方、解る?」
「機構に登録されていれば、手順や注意点は確認できると思いますよ!」
「じゃあ、すぐ確認して!」
学術員が頷いた、その瞬間。
「それと――あなた、今日から養殖係に任命します!」
「えー!?」
思わず声が裏返る。
「お願い!どんどん増やしたいから!!」
川を埋め尽くす魚群を指差しながら、メイヤは迷いなく言い切った。
「この状況、偶然じゃないわ。なら――管理して、育てて、資源にするだけよ」
「……わ、解りました!」
覚悟を決めたように、学術員は深く頷いた。
こうして、「川の異変」は「新たな産業」として正式に動き出したのだった。
「となると……お母様に、すぐ報告書を上げないとね」
メイヤはくるりと踵を返し、歩きながら指を折って考え始めた。
「えーっと……“川でニジニジ魚が大量発生。原因は温水流入の可能性大。養殖可能性あり”……」
「――よし!」
「お魚養殖化計画、スタート!」
勢いよく宣言するが、その直後に小さく肩をすくめる。
「……ただし。細かいことは、正直よく解らないのよね」
養殖池を作るのか、施設を建てるのか。それとも、川そのものを管理区域にするのか。
「その辺は、専門家に丸投げでいいでしょ。うん」
「予算も回してもらって……“必要経費は現場判断で”って書いちゃおう」
筆を止め、少し考えてから付け足す。
「“試験運用のため柔軟な設計を推奨”……っと」
満足そうに頷く。
「完璧ね。大枠さえ決まれば、後は回りが勝手に最適解を出してくれるわ」
川を見下ろしながら、メイヤは小さく笑った。
「まさか温室のお湯が、魚まで育てるなんて……ほんと、この領地は何が起きるか解らないわね」
だが、その不確実さこそが――この領地が、次々と“価値”を生み出す理由でもあった。




