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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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王宮動く

王都中心部――白亜の石で築かれた威厳ある王城。


普段なら冷静沈着な官僚たちも、この日に限ってざわつきを隠せずにいた。


「世界商品登録機構の総責任者が……王宮に?」


「まさか自分から来るのか? あの“鉄面皮のアグライア様”が?」


「一体、何が起きたんだ……?」


ざわめく廊下を、セレスティア学園長とアグライア=ホルンベルグが堂々と歩く。


アグライアは大股で進みながら、ぶつぶつ文句を言った。


「まったく……好んでこんな場所に来るわけないだろうに。今日は特別だよ、特別」


セレスティアは苦笑を浮かべる。


「あなたが“国を動かす覚悟”を見せるのは久しぶりじゃない?」


「歳を取るとね、火がつくにも理由がいるんだよ。――あの子が理由さ」


案内役の侍従は緊張のあまり背筋が固くなり、二人の雰囲気に圧倒されているようだった。


そして――王座の間。


重厚な扉が開くと、国王・宰相・各大臣たちが整列していた。場の空気は重く、張り詰めている。


国王は席からわずかに身を乗り出し、二人を迎えた。


「よくぞ来てくれた、アグライア=ホルンベルグ殿。そなたが自らこの場へ訪れるとは……余も驚きを隠せぬ」


セレスティアは静かに控え、アグライアはひるむことなく歩み出た。


「王よ。今日は“国を揺るがす案件”を持ってきたんだ」


「国を……揺るがす、だと?」


宰相と大臣たちが息をのむ。


アグライアは分厚い封筒を取り出し、王へ差し出す。


「これだ。――とある少女、メイヤという子が提出した“提案”だよ」


「また……メイヤか……!」


王は思わず額に手を当てる。


アグライアは淡々と説明を始めた。


■ 1. 簡易手押しポンプ


「まずは簡易手押しポンプ。水汲みの労力を激減させる仕組みだ。うちの工房で試作しているが……成功の見込みは高いよ。井戸のある町は、生活が根本から変わる」


「生活基盤の刷新……か」


王と大臣たちの目つきが鋭さを増す。


■ 2. 天然酵母の培養


「次に天然酵母。パンの質が劇的に向上する。保存性も良くなるだろう。食糧事情の底上げに直結するはずさ」


「食糧の安定化……これは大きい」


■ 3. 九九表と簡易そろばん


「九九表と簡易そろばんは、教育と会計が大幅に効率化される。兵站計算にも影響するね。誰でも同じ計算基準で動けるようになる」


宰相が身を乗り出す。


「……まさか。計算手順の共通化か?それが普及すれば、税収・貿易・兵站すべてに影響が出るぞ」


アグライアは肩をすくめた。


「そういうこった」


■ 4. 度量衡の統一


そしてアグライアは、最後の一枚を王へ示した。


「そして――これが最大の爆弾、度量衡の統一だよ」


その瞬間、場の空気が凍りついた。


宰相、大臣たちが同時に息を止める。


国王は深く息を吸い、重々しく言った。


「……その問題は、何十年も前から議論されてきた。しかし利権が絡み、誰も踏み出そうとはしなかったはずだ」


アグライアは机に軽く拳を置く。


「そうさ。大商会、地方領主、職人組合。それぞれが自分に都合の良い尺度を手放さなかったせいで、国は長年停滞してきた」


そして、王へ向かって言い切った。


「だが、この子は――“大人が諦めた問題”に、あっさりと答えを置いていった」


王は震える指先で書類をめくる。


「……簡潔だ。かつ、誰も致命的に損をしないまとめ方……。これを子供が……?」


「そう。学園に通い始めたばかりのな」


場には重苦しい沈黙が落ちた。


沈黙を破ったのは、王だった。


「……アグライア。そなたの意見は?」


「国を動かすべきだ。この案は、利害に染まっていない“純粋な最適解”だよ。大人では辿り着けない」


宰相も深く頷く。


「国家規模の改革に値します。経済、軍務、行政の根幹が変わる……!」


王は大きく息を吸い、そして静かに決断を下した。


「――度量衡統一の検討委員会を設置する。

アグライア、そなたを特別参与として迎える」


「いいだろう。あの子が持ってきた火種、しっかり拾ってやるさ」


国王は続けてセレスティアへ視線を向けた。


「メイヤ嬢……あの少女を守れ。国が動く時、最初に狙われるのは“きっかけとなった者”だ。彼女はまだ子供だ。守らねばならぬ」


セレスティアは胸に手を当て、深く頭を下げた。


「もちろんです、陛下。彼女はただの少女ですが……同時にこの国の未来を照らす存在です」


アグライアは鼻で笑う。


「まったく……あのちっこいの、国を動かす油庫みたいな子だよ」


王宮の空気が変わった。


一人の少女が持ち込んだアイデアが、

ついに――国の中枢を動かし始めたのだ。

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