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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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「私からの考えを話すわ!」


畜産男爵は馬車の中で、はっきりと言い切った。


側近達が姿勢を正す。


「先ずは――あの馬車よ。乗用じゃなくて、荷馬車の方ね」


「はい」


「正直、あれが有るか無いかで、うちの領地の物流は別物になるわ」


畜産男爵は指を一本立てる。


「そこで、最初の提案!うちからは、農業用肥料と畜産品。それと交換出来ないか、話をしてみる」


側近達が小さく頷く。


「糞尿は向こうが欲しがっている。家畜はまだ弱い。……理屈は通りますな。相手が乗って来る可能性は高いかと」


「ただ――」


別の側近が慎重に付け加える。


「相手が、“それ以上の価値”を見ている場合もあります」


畜産男爵は肩をすくめた。


「その時は普通に買うわ」


「……即断ですな」


「だって欲しいものは欲しいもの」


そして淡々と数字を出す。


「最低でも、四十台から五十台」


「……!」


側近達の目が見開かれる。


「かなりの数ですが……」


「最低よ?」


「輸送の要になるものだもの。中途半端に導入しても意味が無い」


側近達は顔を見合わせ、やがて深く頷いた。


「理に適っています」


「長距離輸送を考えるなら、それでも足りないくらいですな」


畜産男爵は不敵に笑った。


「でしょう?出来れば蒸気機関車ってのも欲しいけど。。」


馬車の窓から領都の方角を見る。


「交渉してみましょうか!」


その言葉に、側近達も静かに気合を入れた。


この交渉が、両領地の関係を大きく変える。そんな予感が、全員にあった。


「へ?」


「ん?」


「……良いのですか?」


畜産男爵は、思わず聞き返していた。

あまりにも反応が軽すぎたからだ。


「肥料と家畜。代わりに荷馬車でしょ?」


あっさりと、確認するような口調のセリア。


「ええ……まあ、そうですが……」


「条件としては悪くないわよ?」


さらりと返される。


畜産男爵は一瞬、側近を見る。側近もまた、わずかに首を傾げていた。


「でもね」


セリアは指を一本立てた。


「荷馬車は造るのに時間が掛かるの。だから、いっぺんに全部は無理よ?」


「……え?」


「順次、出来た分から引き渡す形になるわ」


「……そ、そうですか……」


拍子抜けするほど素直な条件だった。


「それで問題無ければ進めましょう」


「え……あ、はい。解りました……」


畜産男爵は、思わず返事をしていた。


――交渉は、呆気なく終わってしまった。


もっと駆け引きがあるものだと思っていた。

もっと値を釣り上げられる覚悟もしていた。


だが現実は、「それでいいなら、いいわよ」

という一言で済んだ。


「……」


畜産男爵はしばらく黙り込んでいた。


「領主様……」


側近が恐る恐る声を掛ける。


「……何?」


「これ、本当に……」


「ええ」


畜産男爵は、静かに笑った。


「この領地、私達が思ってるよりずっと――

先を行ってるわね」


その一言が、今回の視察の結論を、何より雄弁に物語っていた。

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