表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

304/372

源泉、開通

「ククク……!」


思わず声が漏れた。


「いろんな事があって、中々進まなかったけど……ここに来てやっとだ!」


領主館の奥、湯気の立ち上る室内を見渡し、メイヤは満足そうに腕を組んだ。


「ついに、温泉を引き込めたぞ!!」


温泉水が、岩組みの湯船へと絶え間なく流れ込んでいる。

止め石の向こうで溢れた湯は、計画通り次の配管へと流れていく。


「よし……!」


メイヤは、ぱんっと手を叩いた。


「早速、ひとっぷろと行きますか!!」


「えっ?」


振り返ると、ミュネが目を丸くしていた。


「ミュネ!温泉へ行くわよ!」


「えええっ!?」



「……これが、温泉……?」


湯気の向こうで、ミュネが恐る恐る湯船を覗き込む。


「そうよ!」


メイヤは得意げに胸を張った。


「源泉掛け流しだわー!!」


「げ、源泉……?」


「うひょひょひょ!!」


既に脱ぎ終わったメイヤが、身体を洗いざぶんと湯へ入る。


「……あ」


思わず声が抜けた。


「まず身体を洗ってからね!!」


「は、はいっ!」


慌てて桶を取るミュネ。


湯船から立ち上る湯気が、室内を柔らかく包み込む。



「ふぅ〜〜〜……」


肩まで浸かり、メイヤは長く息を吐いた。


「こっちの世界に来てから……初めての、ちゃんとした風呂よ……」


「いつもはタオルにお湯をつけて拭くだけだったからね〜」


湯が肌に染み込む感覚に、自然と顔が緩む。


「……ミュネ、どお?」


「……」


ミュネは、すっかり湯船に溶けていた。


「温かくて……ぽかぽか……」


そのまま、ごろごろ……ごろごろ……と喉を鳴らす。


「毎日、入っても良いわよ?」


「えっ!?」


ミュネが跳ねるように顔を上げる。


「温泉だから、お肌にも良いと思うの!」


「そ、そうなんですかにゃ!?」


「たぶんね!」


適当だが、気にしない。


「いや〜……」


メイヤは湯船に身を沈め、天井を見上げた。


「こりゃ〜……やめられませんな〜」


湯気の向こうで、二人の笑い声が重なる。


温泉水は静かに流れ続け、領主館に――新しい日常が、ようやく根を下ろし始めていた。



「……ミュネ?」


「はい!何ですか、奥様?」


セリアは、ミュネの横顔をじっと見た。


「……なんか、毛艶が良いわね?」


「そうですか??」


ミュネはきょとんと首を傾げる。


「んーーー……何かしたの?」


「いえ?特には…………?」


一瞬考えてから、ぽんと手を打った。


「あー……でも最近、毎日、温泉入ってます!」


「……ああ」


セリアは納得したように頷いた。


「メイヤが騒いで作ってたやつね。もう完成したの?」


「はい!」


ミュネは少し誇らしげに胸を張る。


「奥様も如何ですか?気持ちいいですよ!」


「ふーん?」


セリアは腕を組み、少しだけ考える素振りを見せた。


「まあ……試しに見てみるか」




「まず先に、お身体を清めてくださいにゃ」


「はいはい」


言われるがまま、桶で湯を汲み、手早く身を清める。


「……ふんふん」


「それでは、湯船に浸かりますにゃ!」


ミュネが先に案内する。




「……あら〜」


湯船に足を入れた瞬間、セリアの表情が緩んだ。


「良いわね、これ」


「そうですよね!」


肩まで浸かると、じんわりと体の芯まで温かさが広がっていく。


「……ぽかぽか……」


「……あの子が、あれだけ騒いでいたわけね」


セリアは小さく息を吐いた。


「確かに、これは……」


湯気の中で、自然と口元が緩む。


「……悪くないわ」


ミュネは、そんな様子を見てにこにこしていた。


温泉の効果は、まだ誰も正確には理解していない。だが――少なくとも今、二人の体と心は、確かにほぐされていた。


静かに湯が流れ続ける音だけが、領主館の一角に満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ