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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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距離を縮める船

あれから、更にあの三人の男爵について追加資料を受け取ったが──

ふむ……。


前から、お互いに取引はあったらしいな。

完全に独立しているようで、実際はそれぞれの弱点を補い合う形か。


木材、畜産、農業。

どれか一つ欠けても回らないが、三つ揃えば循環する。


なるほどな……。

もしこいつらの領地が、今よりも互いに近ければ。

発展の速度は、今の倍……いや、それ以上だっただろう。


となると──。


「おい」


「へい?」


「うちで建造してる、あの新型船だ。両脇に水車が付いたやつ」


「あー! あれですかい!」


「どの程度まで進んでる?」


「いや〜……正直、詳しい情報はまだでして」


チッ。


「完成したら、一隻すぐにこちらへ回せ。それと同型の二番船も同時に作らせろ。伝えておけ」


「わかりやんした!」


あの船なら、吃水が浅い。

遠浅の港にも入れるし、湾が狭くても取り回しが利く。


一隻で、木材男爵の港を回り、

畜産男爵の港で積み替え、

農業男爵の港で荷を載せて王都へ。


逆も同じだ。


「……一隻で三領地を繋げる」


距離が離れている?

だからどうした。


船が走る距離は、俺が縮めてやればいい。


「領地が遠いならな……」


アステリアは、地図の上に指を走らせながら、口元を歪める。


「少しでも、俺の方から近づいてやる」


港と港を線で結ぶのではない。

人と人、領地と領地を、流れで繋ぐ。


その中心に立つのは、船だ。


「採算は問題ねぇ……むしろ、ここからが本番だな」


距離は、障害じゃない。

工夫次第で、武器になる。


そしてその武器を持っているのは──

今は、俺たちだ。



「アステリア様!」


「……あー? ……ああ!木材男爵か」


「は、はい。お忙しいところ失礼を……」


男爵は一瞬言葉に詰まりながらも、背筋を正した。


「職人を数十名、第1地区に集めております。どれも現場指揮が可能な者ばかりです。追って、作業員も領地から呼び寄せております」


「よし」


即答だった。


「まずはそいつらに現状を見せろ。港、倉庫、動線、全部だ。無駄と詰まりを洗い出させろ」


「はっ!」


アステリアは懐から麻袋を二つ、いや三つほど放り投げた。


「それと、これを渡せ」


「……? こ、これは?」


「中身も含めてな。職人全員に見せろ。この二、三袋は――」


一拍置き、口元だけで笑う。


「実験に使って構わねぇ」


「じ、実験……?」


「説明書も一緒に渡してある。コンクリと、補助材だ」


「コンクリ……?」


聞き慣れない単語に、男爵は目を瞬かせる。


「建設に役に立つはずだ。いや、役に立たなきゃ困る」


「は、はぁ……」


「現場の判断で、使い方を考えろ。壊してもいい、失敗してもいい。だが、試さないのはナシだ」


男爵は袋を抱えたまま、思わず喉を鳴らした。


「……よ、よろしいのですか?このような物を……」


「いいから、さっさと行け」


「は、はいっ!!」


慌てて踵を返す男爵の背中を見送りながら、部下が小声で尋ねる。


「姉さん……あれ、相当な価値の……」


「知ってる」


「……」


「だからこそだ。“使える”って分かった瞬間、建築の常識が変わる」


アステリアは、遠く第1地区を見据えた。


「港はな、物だけじゃなく“技術”も流れる場所だ。ここを押さえりゃ、王都の作り方そのものが変わる」


そして、いつものように不敵に笑う。


「さあて……忙しくなってきたな」

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