表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

301/374

静かに増える命

「あらあら……」


セリアは届いた報告書に目を通しながら、思わず声を漏らした。


「アステリアちゃん、随分と家畜を回してくれるのね」


数字を追う。

軍馬、馬車馬。

肉牛、乳牛、豚、山羊。

しかも一度きりではなく、今後も頭数は未定だが継続的に送り込むという文言付きだ。


「うちの領は、その辺が本当に少なかったものね」


元々、フェルナード領は加工と流通に強く、畜産は後回しにされがちだった。

メイヤが増やそうと動いていたのも知っている。


「でも……」


セリアは少しだけ表情を緩める。


「ピヨピヨ以外は、専門家が居なかったのよね」


鶏程度ならどうにかなる。

だが牛や馬、乳用家畜となると話は別だ。

知識も、経験も、管理も必要になる。


「難しかったのも無理はないわ」


だが、そこに変化が起きた。


領民募集。

王都から、地方から、流れてきた人材。

その中に、畜産に関わってきた者達が含まれていた。


「……ふふ」


セリアは資料を閉じる。


「条件は、揃い始めてるわね」


家畜が来る。

人が来る。

流通は既に整っている。


「これは……大いに発展するかも」


肉も、乳も、皮も、肥料も。

全てが領内で回り始めれば、農業にも波及する。

冬を越す備えにもなる。


「アステリアちゃん」


彼女は窓の外を見やった。


「貴方、やっぱり目の付け所が良いわ」


そして同時に、こうも思う。


――これはもう「支援」じゃないわね。

――連動し始めている。


静かに、しかし確実に。

フェルナード領の足元で、命の数が増え始めていた。



「おい!畜産男爵!」


「だから畜産男爵って言うなって言ってるでしょ!!」


振り向いた彼女の前に、どさりと麻袋が投げられた。


「ほれ!軍資金だ!」


「麻袋?こんなもんで何しろっていうのよ!」


「ばっかー!中身を見ろ!」


渋々紐を解いた瞬間、彼女の動きが止まる。


「……げっ!? こ、これは……」


中に詰まっていたのは、白い結晶。

一目で分かる。数も、質も、尋常じゃない。


「そうだ」


アステリアは腕を組んで言い切った。


「隣の第2地区で換金してこい。全部だ。それを共同経営の資金にする」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


袋を抱え込むようにして、畜産男爵が睨み返す。


「それで?」


「それで、領地に戻って紫石関係を徹底的に調べて来い」


「採れる場所、量、質、誰が知ってるか、全部だ。報告な」


「……あんた」


一拍置いて、低い声になる。


「これが、いくらするか知ってるの?」


「当たりめーだ!!」


即答だった。


「だから軍資金だって言ってんだろ」


そして、ふっと口元を歪める。


「その中の一キロ位なら、領地に持って帰ってもいいぞ?」


「料理人にでも渡してやれ」


「……料理人?」


「甘い物は超高級だ。菓子でも作ってもらえ!」


しばらく沈黙。


やがて畜産男爵は、深く息を吐いた。


「……ほんっと、無茶苦茶ね」


だが、目は笑っている。


「解ったわよ!共同経営、乗ったわ」


麻袋を肩に担ぎ、歩き出しながら振り返る。


「後で泣き言言わないでよ?こっちは本気で動くから」


「望むところだ」


アステリアは不敵に笑った。


「先に泣くのは、気付くのが遅かった連中の方だ」


紫石を巡る歯車は、

この瞬間、完全に噛み合い始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ