世界商品登録機構へ
王都の外れ、巨大な石造りの建物。その正面に掲げられた看板には――
《世界商品登録機構》
アイデア、設計図、現物……一体どこまで登録できるのか。
気になって仕方のない私は、ついに“ババア”こと登録官の元へ確認しに来たのだ。
「身分証を確認します」
門番に提出した瞬間――。
「……っ!? し、少々お待ちを!」
ギョッとした顔で奥へ走り去った。え、何? そんなに怪しい身分だったっけ私?
ほどなくして、ババア本人がダダダッと走ってきた。
「ちっこいの!! あんた、もうこの登録証明書が役に立つとね!?」
ババアは私の肩をガシッとつかむと、半ば引きずるように機構内部へ案内した。
机の上に、私が持ってきた書類と設計図がずらり並べられる。
・簡易手押しポンプの構造図
・天然酵母づくりの実験手順
・九九表の下書き
・簡易そろばんの斜視図
・度量衡の統一表案
ババアは一枚一枚、じっくりと目を細めて読み込んだ。
「ふむ……ふむふむ……なるほどねぇ」
「アイデアだけでも登録できるの?」
「できるさ。ただし条件はいろいろあるよ」
ババアが指を一本立てる。
「まず簡易手押しポンプと簡易そろばん。これはうちの専属工房で一度“再現”させるよ。うまく動いたら登録ね」
よっしゃ!
「天然酵母の実験手順。これは調理工房で試す。これも上手くいけば登録だよ」
よっしゃよっしゃ!
「ただ、度量衡の統一表案。これはすぐには判断できん。他の部署とも協議が必要だから預かりね」
まあこれは仕方ない。
「ちっこいの、これが全部登録できたら……あんたんとこの領地、もっと金が入るよ!」
「よし! じゃあすぐ領地に工房作らないと! 器具も人も――」
「ちっこいの、あんた……ちょっと勘違いしてるね」
「え?」
ババアはニヤリと笑った。
「委託製造だよ」
「……へ?この世界にもあるの!?」
「そりゃあるさ。作る場所はどこでもいい。ただし――」
ババアは指を二本目立てた。
「材料が手に入る。人件費が払える。生産が可能で使用料金を払っても赤字にならない。その上で利益が出るなら、どこの工房だって委託を受けるのさ」
さらに三本目。
「けどね、魚が取れない土地で魚の加工はできないだろ? そんなもんさ」
めっちゃ合理的……!
ていうか普通に近代的システムじゃん……!
「だから、あんたの領地で全部造る必要はない。むしろ適材適所で委託した方が儲かるかもしれないよ」
「……それ、もっと早く教えてよ!」
「聞かれなかったからねぇ!」
ババアは愉快そうに笑った。
こうして私は、アイデアが“世界商品”として動き始める仕組みを初めて知ったのだった




