表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

298/380

紙の洪水

王都にある機構本部は、朝から異様な空気に包まれていた。


廊下を行き交う職員の足取りは早く、声は自然と大きくなる。

机の上には未処理の書類が積み上がり、普段なら整然としているはずの書庫前にも人だかりが出来ていた。


その様子を、奥の執務室から眺めながら、ババアが眉をひそめる。


「……何ざわついてるのよ?」


報告役の職員が、やや息を切らして答える。


「早馬……いえ、早馬車が到着しました」


「早馬車?」


ババアは片眉を上げる。


「それが……三台です」


「三台も?何積んで来たのよ?」


一瞬の間。

職員は喉を鳴らし、はっきりと言った。


「……三台とも、フェルナード領からであります」


「はぁ〜?」


声が、素でひっくり返った。


「登録確認書です。ロウルからの書面も混ざっております!」


「……なっ!!」


ババアは椅子から半分立ち上がった。


「ちょっと待ってよ!?冗談で言ってた事が、実際に来たっての!?」


机を指で叩きながら、書類の山を睨みつける。


「どんだけ新商品考えたのよ……物流が戻りつつあるから、一気に来たって事!?」


三台分の書類。

新型機械、改良品、派生製品、用途違いの再登録。さらに、ロウル名義の船舶関連登録まで混ざっている。


「……こりゃ……」


一瞬、頭を抱えそうになるのを堪え、ババアは顔を上げた。


「うぉおい!!」


執務室の扉を勢いよく開け、廊下に向かって怒鳴る。


「皆んな!ざわざわしてるだけじゃ仕事は終わらないわよ!」


職員達が一斉に背筋を伸ばす。


「さっさと降ろして!仕分けして!番号振って!目を通すわよ!!」


その声に押される様に、機構本部は一気に“仕事場”へと戻っていく。


紙が運ばれ、印が押され、走る足音が重なる。


ババアは机に戻り、最初の束を掴んだ。


「……まったく」


口元だけで笑う。


「これだから、あの辺境は……静かにしてると思ったら、まとめて殴ってくるんだから」


それでも、その目は冴え冴えとしていた。


この洪水は、停滞ではない。

間違いなく――前進の証だ。


そして機構は、その最前線に立たされている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ