王都散策とメイヤの“技術メモ”爆発の日**
放課後。
メイヤ、セレステ、ミュネの三人は、王都見学と称して街へ繰り出していた。
混雑する大通りを進むたびに、メイヤの目がキラキラしていく。
王都で暮らすのは初めて――つまりこれは、前世の知識を総動員して“観察できる機会”でもあるのだ。
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■水回り事情に衝撃
まず気になったのは、街角の水場。
人々が列を作り、井戸からせっせと水を汲んでいる。
バケツを担いで運ぶ人、肩を痛めている人、子どもまで総動員。
「……あれ、全部“手汲み”なんだ」
メイヤは眉をひそめた。
(いや、技術的にポンプぐらい作れるでしょ……水鉄砲のピストン構造そのまんまで、シンプルな“簡易手押しポンプ”なら余裕だし)
井戸の構造を確認しながら、メイヤはもう頭の中で動き出していた。
(うん、筒とピストンとバルブだけでいい。漏れ止めは布でも代用できる。これなら領地の大工でも余裕で作れる!)
メイヤは即、メモ帳を開いてカリカリ書き始めた。
「またメモ魔が始まった……」
リディアが苦笑する。
■パン屋で“発酵の闇”を知る
次に立ち寄ったのは、香ばしい匂いに誘われたパン屋。
しかし、棚に並ぶパンは――
ふわふわではなく、どこか硬い。
店主は肩をすくめて言う。
「発酵がねぇ……その日によって全然違うんだよ。気温が違うと駄目でよ……」
メイヤの脳に電撃が走る。
(酵母の管理が全くされてないんだ……!)
前世で学んだパン好き知識が火を噴く。
(リンゴとブドウから酵母が取れる。小瓶に果汁混ぜて、暖かい場所に置けば“天然酵母”作れるはず!)
「リディアの家の厨房借りれば……実験できる!」
小さく拳を握るメイヤ。もう完全に目的が変わっている。
■文具店で“九九表”に気づく
さらに歩いていると、文具店で子どもが計算ドリルに頭を抱えていた。
店主が嘆く。
「九九なんて覚えるのはほんの一握りだよ。
みんな指折り数えてるんだから」
(九九表……この世界無いの!?)
メイヤは固まった。
(え、ただの表でしょ!?紙とインクがあれば秒で作れるやつ!!しかも今、領地はゴアゴア紙の大量生産体制に入ってる……)
頭の中で売上予測が高速で流れた。
(九九表、絶対売れる! 学校必需品じゃん!!)
■露店で“そろばん未発明”を知る
会計時、露店のおじさんがあまりにゆっくり計算しているのを眺めて気づく。
(あ……これ、“そろばん”が無いんだ……)
「お姉ちゃん、そろばんって知ってる?」
「……何それ?お菓子の名前?」
(よし、この世界まだ手を付けてない!!)
「図面だけ描いて、領地に送ろう。材料木だけだし、絶対作れる」
■薬局前で“度量衡の統一表”の必要性に気づく
薬草を量り売りしている老人が、
「匙一杯」「小山盛り」など曖昧すぎる言い方をしている。
ミュネが困惑する。
「……分量が毎回違うのでは?」
「違うよね……」
メイヤは静かに確信した。
(度量衡、ぜんっぜん統一されてない……!なら、私が“共通基準表”を作って配れば、むしろみんな助かる!)
寸法・重さ・容量を統一した**“度量衡基準表”**。紙一枚で価値がある。
■三人、カフェでメイヤを見守る
その後、カフェで休憩を取るも……
テーブルいっぱいに図面、メモ、前世の再現案が広がっていた。
•簡易手押しポンプの構造図
•天然酵母づくりの実験手順
•九九表の下書き
•簡易そろばんの斜視図
•度量衡の統一表案
ミュネは紅茶を飲みながらため息。
「……メイヤ様、完全に“いつもの”ですね」
リディアも笑って肩をすくめた。
「でも、こういうところがあの子らしいのよね」
メイヤは、そんな二人の視線に気づかず――今日見聞きした全てを黙々と図面化している。
■締めの決意
描き終え、メイヤは鉛筆を置いた。
(よし……これ全部、領地に送る!簡易ポンプは村が喜ぶし、そろばんと九九表は王都でも売れる!酵母が成功すればパン革命起きるし……度量衡表は商人から絶対感謝されるでしょ!!)
ふふ、と悪い顔になる。
「王都、宝の山すぎるんだけど……」
その言葉にセレステとミュネは、「また領地の未来が変わるわね……」と思わず顔を見合わせた。




