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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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温もりの使い道

南の植物かぁ〜。


あのコショコショの木……気になるのよね。

でも、この気候じゃ厳しいって、学術員さんも言ってたし。

普通に育てるのは、まず無理でしょうね。


寒さが問題なら――

暖かくすればいい。


……ん?


暖かく、する……?


はっ!!


「温室……!」


思わず声が漏れる。


そうだ。温室。

しかも、ただの温室じゃない。


「……温泉水」


温泉計画で余るはずの熱。

今は使い道がなくて、流しているだけの温もり。


それを――

温室の床下や壁に巡らせれば?


南の植物でも、育つんじゃない?


「……いける」


頭の中で、勝手に絵が出来上がっていく。

透明な壁。

温泉水が流れる管。

冬でも白い息の出ない空間。


しかも――

香辛料。薬用植物。南方作物。


「……付加価値、高くない?」


思わず、口元が緩む。


お母様が必要と判断すれば。

研究価値、領地価値、将来の交易価値。


何より――


「私の温泉計画が、前に進む!」


一石二鳥。

いや、三鳥くらいある。


「よし」


メイヤは勢いよく立ち上がった。


「提案書、回してみよ!」


温泉計画の“別案”として。

温室併設。熱利用。作物試験。


却下されてもいい。

でも、刺さる可能性は十分ある。


「ふふふ……」


これは、悪くない。

むしろ――かなり、いい。


温もりは、湯にするだけじゃない。

育てるためにも、使えるのだから。



その頃、王都では――

ひとつの噂が、静かに流れ始めていた。


「噂?何のだ?」


アステリアは、書類から顔を上げた。

報告に来た部下は、少し言いにくそうにしながら口を開く。


「近衛の門番が……ポロッと愚痴ってたそうで」


「ほう?」


「どこかの領主が、小麦を王城へ大量に持ち込んだらしいんです」


アステリアの眉が、わずかに動く。


「続けろ」


「事前の連絡もなく、しかも商人経由じゃなく、直接王城へです。なので王城側も把握しておらず……」


「保管場所が無かった、か」


「はい。王城でも受け切れず、結局、断ったそうです」


部下は続ける。


「門番も相当困ったらしくて……。『王都が困ってる時には兵も寄越さなかったくせに』って。『落ち着いてから小麦を持ってきても意味がない』と、ぼやいていたとか」


アステリアは、ふっと鼻で笑った。


「……はぁはーん」


机に肘をつき、指を組む。


「内乱中の間は様子見。で、落ち着き始めたら“名誉挽回”ってやつか」


王城に直接持ち込めば、恩を売れる。

そう踏んだのだろう。


「だが、今更だな」


断られた小麦は、戻すにも金が掛かる。

倉を探すにも時間が掛かる。


「となると――」


アステリアは、口角を上げた。


「一気に、王都へ流すしかない」


市場へ。

商人へ。

値を下げてでも、吐き出すしかない。


「……成る程な」


姉の判断が、頭の中で繋がる。


「姉御は、これを読んでたわけか」


今、食料を出し続ければ。

この“後出しの小麦”とぶつかり、暴落を招く。


だから止めた。

だから、資材に切り替えた。


「やっぱ、先を見てる」


アステリアは、すっと立ち上がった。


「よし。こっちも切り替えを徹底だ」


「食料は?」


「触るな。今は危険だ」


波が立つ前に、船を動かす。

それが出来るかどうかが――

今後の生き残りを分ける。


王都の空気は、まだ静かだ。

だが、その下で――

確実に、歪みは膨らみ始めていた。

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