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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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遮断を読む者

アステリアは、フェルナード領から入港した船より差し出された書類を受け取った。

封蝋を切り、内容に目を通した瞬間――思わず、目を見開く。


「……は?」


小麦及び、食料系全般。

以後、我が領より一切出荷せず。


「なっ……何を考えてるんだ、姉御……」


思わず声が漏れる。

この時期は掻き入れ期だ。

食料は出せば出すほど捌ける。止める理由が、表面上は見当たらない。


「……いや、待てよ」


アステリアは書類を机に置き、腕を組む。


姉御が、理由も無く止める訳がねぇ。


判断はいつも早いが、無茶はしない。

ならば――何かを掴んだ。


「どうされたんですか?」


側近が様子を窺う。


「これを見ろ」


差し出された書類に目を走らせ、側近も眉をひそめた。


「え……この掻き入れ期に、食料を全面停止ですか?備蓄が尽きかけてる……とか?」


「いや、恐らくちげーな」


アステリアは、港の方角へ視線を投げる。


「代わりに来た積み荷を見ろ。木材、石材、金属――建築資材が山ほどだ」


「……確かに」


「姉御は、先を見てる。食料は“足りなくなる”んじゃねぇ。“余る”のを読んだんだ」


市場が崩れる前に、遮断する。

王都だけでなく、領地そのものを守る判断。


「それなら……うちからの積み荷も、変更しますか?」


側近の問いに、アステリアは即答した。


「そうだな」


書類を軽く叩き、決断を下す。


「こっちからの情報が、いつ向こうに着くかは分からん。だが――もう積み込んだ物を、今さら下ろす必要はねぇ」


「……」


「うちも切り替えろ。食料は止めて、資材系に全振りだ」


迷いは無かった。

理解したからこその即応。


「わかりやんした!」


側近が駆け出すのを見送りながら、アステリアは小さく笑った。


「……流石だな、姉御」


誰も声高には言わない。

だが、今、確実に流れが変わり始めている。


それに気づける者は、まだ少ない。

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