領地に走る激震とメイヤの黒い企み
■領地、騒然!
王都でメイヤたちが学園生活を始めていた同じ頃――
領内は、別の意味で大忙しになっていた。
鉛筆とゴアゴア紙の大量生産を見据え、領地の工房群は着々と建設が進んでいた。
・砕いた繊維を処理する“水車バラバラ小屋”
・材料をかき混ぜ続ける“水車マゼマゼ小屋”
・鉛筆の芯を練る“コネコネ部屋”
・芯を焼く“ヤキヤキ部屋”
・完成品を乾燥させる棚工房
領地全体が新産業区画として活気に満ちていた。
そこへ――
ドドドドドッ!!
「領主様への至急の書状! 世界商品登録機構より!!」
ガルドが駆け寄り、封書を受け取る。
セリアとアルトリウスも顔を寄せる。
「何の件か?」
封を開けた瞬間、ガルドの表情が固まった。
「こ、これは……!」
「何だ?」
「メイヤ様のクロスボウ……大人用を 四百丁、近衛隊が正式発注……!」
「……!?」
「「四百!?」」
領主家全員が固まった。
「ちょっと待て、量産なんて……できるのか?」
「無理ね。だってあれ、ほぼ手作業よ?」
セリアは頭を抱えた。
ガルドがメイヤから渡されている“改善メモの束”を取り出して確認するが――
「……量産化の案が、一つもない……」
「くっ……! この状況、断るわけにもいかぬ……!」
ガルドはすぐに走った。
「木工師を! 急ぎ招集だ!」
■木工師たちとの緊急会議
木工師ギルドの棟梁が駆けつけると、ガルドは図面を叩いた。
「このクロスボウ、四百丁作らねばならん。
メイヤ様の“構造メモ”を元に――効率化の案を出せ!」
棟梁はクロスボウをしげしげと見つめる。
「……ほぉ。削りの比率が多いな。木の反り合わせも難しい。だが――水車を使えば“回転削り”ができるかもしれん」
「いけるのか?」
「やってみる価値はある。ただし、追加で水車小屋と加工場を建てねぇと回らん!」
「建てるんだな?」
「当然よ!」
ガルドはすぐに指示を飛ばした。
「追加の水車小屋を二棟! 加工場も増築!
職人の手配はワシがやる! 急げ!」
領地は再び大工事モードに突入した。
「メイヤ様……あなたがいないと、大変ですぞ……」
と、ガルドは遠い王都に向けてため息を漏らした。
■王都・学園 ――貴族は今日も帰る
翌日。
メイヤとリディアが教室に入ると……
「じゃ、出席は取ったから帰るぞー」
「今日もつまらん授業だしな」
貴族の半数以上が立ち上がり、そのまま去っていった。
「またか……」
「昨日と同じだね」
あまりのマイペースぶりに、メイヤもリディアも苦笑いするしかなかった。
■授業中、メイヤの脳内は大忙し
机に教科書を広げながらも――
メイヤの思考は完全に領地モードだった。
(王都の技術者、親が金属加工してたり、紙漉きだったり……“技術持ちの子”が普通にいるじゃん……)
(つまり――ここは“引き抜きの宝庫”ってやつ……!)
口元に不穏な笑みが浮かぶ。
(そして王都。これは需要の宝庫。この世界にまだ無い、領地で再現できる物……探せば山ほどある!)
(あー……だからババア……アグライア様は、私に言ったんだ)
脳裏にあの時のやり取りが蘇る。
“お前さんは、これを見れるようにしておきな!推薦人はこのババアでいいだろうさ!”
(私の“前世の臭い”に気づいたのかな?いや、あの人の方が前世の私より若そうだけど……)
メイヤは一人で小さく肩を震わせた。
リディアが心配そうに覗き込む。
「メイヤ……また悪いこと考えてるでしょ?」
「計画と言ってほしい」
メイヤはニヤリと笑った。
(王都での情報収集。そして――将来の技術者の囲い込み……)
(全部、やってやる)
■領地と王都、それぞれが動き出す
領地では、追加水車小屋と加工工房の建設が始まり――
王都では、メイヤが静かに“未来の人材リスト”を作り始めていた。
この日も、王国の未来は大きく動き続けていた。




