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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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学園初日と“去っていく貴族たち”

その夜。セレステ邸の客間には、メイヤ、リディア、そしてミュネが集まり、湯気の立つハーブティーを囲んでいた。


「ねぇ……今日のあの人、世界商品登録機構の責任者……一体何者なの?」


メイヤが震える声で切り出すと、ミュネが「そこ気になりますよね」と笑って頷いた。


「正式に言うと――

機構総責任者・アグライア=ホルンベルグ様。

王国が創設した“産業・技術・商取引の最高機関”で、全部門の統括役です」


「そんな人だったの!?」


「そりゃ怖いわけだ……!」


ミュネはお茶を置き、さらに続ける。


「昔から“鉄の女”とも呼ばれてます。学園でも名物でして……現役時代、全学科で歴代最高点をたたき出したとか」


「え、それミュネ、なんでそんなに詳しいの?」


リディアが不思議そうに聞くと――

ミュネは少し照れたように笑った。


「えっと……実は私もこの学園の卒業生なんです。だから先生や制度はほとんど知ってますよ」


「なんと……!」


「ミュネって実はすごかったりする……?」


「いえいえ!ただのメイドですから!この家から学園までは歩いて二十分ほどですし……明日も間に合うように起こしますね!」


メイヤとリディアは、頼もしさに思わず顔を見合わせた。


■翌朝、学園へ


朝の王都は、通勤と商人の荷運びで活気に満ちていた。

2人はミュネに見送られ、メイヤとリディアは並んで学園へ向かう。


「本当に二十分だね。ちょうどいい運動だよ」


「うん。……でも、なんか視線が痛い気がする」


学園前に近づくと、門の脇で談笑していた貴族の一団が、こちらをちらりと見て口を開いた。


「平民は大変だな。わざわざ歩いて登校とは」


「……はぁ、これね」


「セレステが言ってたやつだ」


二人は顔を見合わせ、小さく肩をすくめた。

だが、周囲を見渡すと歩いて来ている学生は普通にたくさんいる。


(あれ?これ、貴族だけが騒いでるパターン……?)


と思っていると――別の声が聞こえた。


「あれ?あの二人……特待生じゃね?」


「ってことは、あの領地再生の……?」


ヒソヒソ話が一気に広がる。


「もういいよ……朝から疲れたよ……」


「メイヤ、顔に出てるよ」


半ばため息まじりで、二人はクラス分け掲示を確認した。


「同じクラスだって」


「よかった……別だと泣くところだった」


■ざわつく教室


教室に入ると、まだ登校したばかりの生徒たちがざわめいていた。

メイヤとリディアが入ると、すぐにヒソヒソと声が上がる。


「特待生だ……」


「しかも二人とも貴族?」


「領主家だってよ」


遠巻きに距離を置かれ、観察されるような視線が集まる。


(あー……これが学園ってやつね。しかも貴族の距離感、面倒だ……)


メイヤは学生生活自体久しぶりで、少し胸が高鳴るのを感じつつ、同時に不安もある。


リディアは落ち着いていて、

「まあ、こうなるよね」とでも言いたげだった。


間もなく、クラス教師が入室した。


■クラス教師の自己紹介と――謎の退室


「えー、本日からこのクラスを担当する、クラウスだ。難しいことは後回しにして、まずは出席と自己紹介からだな」


五十代ほどの男性で、落ち着いた空気をまとっている。

王族派か反王族派か――そのあたりは一切読み取れない。


生徒が順番に自己紹介をしていくと――


授業開始数分前。


突然、貴族の一団が立ち上がった。


ガタッ、ガタガタッ。


そして――そのまま出口へ歩いていく。


「あれ?え……帰るの?」


「授業、これからだよね?」


メイヤもリディアも目を丸くした。

しかしクラウス教師は全く止めない。


「出ていく者は放っておけ。授業を始める」


淡々とした一言で授業が進行し始めた。


(な、何これ……?)

(セレステが言ってた“貴族のサボり”ってこれか……)


教室には半分ほどの生徒だけが残った。


■残ったメンバーで再び自己紹介


授業後、クラウス教師が言った。


「残った者同士、顔を覚えておけ。こっちの方が、よほど意味がある」


教師が去ると、生徒たちは自然と輪になった。


「私たち、商人の家です。よろしく!」


「うちは鍛冶屋なんだ」


「農家です!」


平民や商人階級の子どもたちばかりだった。


その中の一人が、興味津々で二人に近づく。


「貴族の人が残るなんて珍しいよ。普通、貴族は“授業を受ける必要がない”って帰っちゃうらしいから」


別の子も続ける。


「話しかけても無視するさ。だから今日みたいに残る貴族がいるって、逆に嬉しいよ!」


メイヤとリディアは顔を見合わせ、微笑んだ。


「そんな……私たちも普通に授業を受けたいんです」


「むしろ、皆と話せて助かったよ」


こうして、二人の学園生活は――

予想外の静けさと、予想外の温かさに包まれて始まったのだった。

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