王城での謁見!震える2人と、両親の黒歴史が炸裂!?
王城の大広間――。
メイヤとリディアは、まるで石像のように固まっていた。
「ど、どうしようリディア……歩き方おかしくなってない……?」
「わ、わかんない……膝が震えて……砂糖菓子みたいになってる……!」
その背中を押すように、セレステ学園長は呑気に笑った。
「まぁまぁ、緊張しすぎよ。ほら、胸を張って。陛下は怖い人じゃないわ。昔からね」
「昔から……?」
メイヤが問いかけたが、セレステは意味深に微笑んだだけだった。
◆◆◆
謁見の間。
王座のある玉座の間へ通され、2人は息が止まりそうになる。
広い……輝く……なんか王様のオーラがすごい……!
玉座に座るのは五十代前半ほどの男性。柔らかい目元、威厳を湛えた佇まい。
しかし、その視線は優しかった。
「面を上げよ。……ほう。お前たちがアルトリウス家の娘か」
メイヤとリディアは慌てて頭を上げた。
「は、はひっ!!」
「よ、よろしくお願い、します!!」
緊張で噛みまくりである。
セレステは横で苦笑し、陛下へ頭を下げる。
「陛下。こちらが件の“クロスボウを作った”娘たちです」
王様はうむ、と頷くと、近衛兵が恭しく布に包まれた品を運んできた。
布を払うと――
そこにはメイヤが作ったクロスボウが置かれていた。
「……見事だ」
王様は低い声で言った。
「セレステから話は聞いておったが……これほどとは思わなかった。機構、構造、威力。全てが並外れておる。これを10歳にもなってない娘が作ったというのか」
2人はぽかんとした。
「しかも、すでに世界商品登録機構に登録されているとな?」
ぽかん×2。
メイヤは小声でリディアに囁く。
「……なんで王様の方が詳しいの……?」
「し、知らないよ……!」
ふたりの唖然を楽しむかのように、陛下は口元を緩めた。
「近衛隊長から申し出があってな。“大人用クロスボウを400丁、正式に発注したい”と。……アルトリウス家に伝えておけ。至急準備をと」
「よ、よんひゃく……!?」
メイヤの声が裏返る。
「し、父様気絶しませんか……?」
「むしろ喜ぶじゃろう。あの男は昔から、何かと“巻き込まれ貴公子”だったからな!」
「……へ?」
王様は突然きらきらした目になった。
「ほっほっほ! アルトリウスとは学生時代の同級生でな。アイツは学園の揉め事に勝手に巻き込まれては、毎日違う派閥に追い掛け回されておった。あれはもう“事件磁石”というほかなかったわ!」
メイヤは心の底から思った。
(……お父様、そんな二つ名があったの……?)
衝撃でリディアの肩が震えている。
王様はさらに続ける。
「そしてお前たちの母、セリア。あいつは――」
軽く咳払いして、懐かしそうに言い放った。
「“鉄拳聖女”と呼ばれとった」
メイヤとリディアは同時に声を失った。
「せ、聖女……?」
「鉄拳……?」
セレステが横で吹き出しそうになっている。
王様は少し頬をかきながら、遠い目をした。
「……儂を殴ったことがある」
「ええええええええええ!!!??」
謁見の間が揺れた。
陛下は苦笑混じりに思い出す。
「儂は当時まだ若くてな。ちょっと調子に乗って失礼な真似をしたのだ。そしたらセリアが“王族でもダメなものはダメです!”と拳を振るってきて……なっ、殴ったな! 儂を殴った者など、祖父母と父上と、メイド長と近衛隊長しかおらんのに!」
セレステが冷静にツッコむ。
「……結構殴られてますわね陛下」
「そうなのだ! 儂の周りはなぜか強い者ばかりだった!」
メイヤもリディアも、ただただ大混乱である。
(お母様……すごすぎる……)
(なんでその血が私たちに……!?)
王様はふっと真顔に戻った。
「だがな――あの2人は、立派な者だ。今も領地のために全力で働いているのだろう?」
メイヤとリディアは姿勢を正す。
「はい!」
「領地の開発も、住民の暮らしも、上手くいっていると……!」
「うむ。それを聞けて安心した」
陛下は少しだけ声を柔らかくした。
「セレステから話は聞いておる。お主たちが試験で出した偉業、それに対する“くだらぬ異議申し立て”の件もな」
2人の表情が曇ると、王様は静かに首を振った。
「気にする必要はない。お前たちは正しい努力をし、正しい成果を出した。それを妬む者の声など、いずれ消える」
言葉には王としての重みと、ひとりの大人としての優しさがあった。
「メイヤ、リディア。お前たちは――」
王様は玉座から身を乗り出し、まっすぐに見据えた。
「“正しいと思う道を行け”。身分に左右されず、恐れず、胸を張れ。お前たち2人は、それができる子だ」
胸の奥が熱くなる。
メイヤもリディアも、自然と涙が滲んだ。
「……はいっ」
「陛下の言葉、決して忘れません!」
王様は満足げに頷いた。
「よし。では2人とも、これからの学園生活を楽しめ。半年ほど王都に滞在するのだろう? 存分に学び、遊べ」
セレステが横から笑う。
「もちろん、私がしっかり監督しておきますわ」
王様はふっと笑った。
「……それが一番不安なのだがな」
「陛下、酷い!」
謁見の間に温かい笑いが広がった。
こうして――
メイヤとリディアの王都での新たな日々が幕を開ける。




