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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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想定外の同乗者と掲げられる名

訓練の成果は確かだった。

集合、誘導、乗船――誰一人として迷うことなく、部隊は速やかに船へと吸い込まれていく。

甲板には緊張と高揚が入り混じった空気が満ち、いよいよ出航の時が来た。


……その時だった。


「お母様に、秘書さんーズ!?どうして!?」


思わず声を上げたメイヤに、当の本人は実に楽しそうに手を振る。


「やーねー!どうしてって、私もちゃんと訓練に参加してたじゃない?」


「え!?」


メイヤは反射的に、三名の隊長へ視線を走らせた。

――が、三人とも見事なまでに同時に目を逸らす。


ここでごねられるのを防ぐために、ナータの件は“言い切り”で押し切ったのに!!


完全に想定外だった。

お母様対策など、一切考えていなかった。

隊長たちも同様だったのだろう。止めることもできず、気づけばこの状況だ。


どうする?どうする!?しかも秘書さんたちまで!?


刻一刻と、出航予定時刻が迫る。

ここで揉めれば、全てが狂う。


あー……この空気だから誰も言えなかったのか……


覚悟を決めたメイヤは、低い声で念を押す。


「お母様、船から降りないでくださいよ!」


「解ってるわよー!」


「本当ですよ!?王都の地は踏まないでくださいよ!!」


「任せてね!」


……信用していいのか、悪いのか。

胃の辺りがきりきりと痛む。


「出航していいか?」


「……はい」


短く答えたその瞬間、汽笛が鳴り響いた。

船は静かに、しかし確実に岸を離れていく。



船内では、すでにリディア隊長が学生たちを集めていた。

無駄のない動きで前に立ち、簡潔に告げる。


「目標!世界商品登録機構本部!機構隊長以下と連携し、情報を回収する!」


一瞬、船内の空気が引き締まる。


「情報収集後、その場で対応。最悪の場合は現地に立て籠もるが、基本は速やかに船へ帰還!」


学生たちは無言で頷いた。


「なお――移動中は、これを撒く!」


そう言って配られた紙束。

そこには大きく、力強い文字が並んでいた。


――

エドラン軍

ロウル軍

フェルナード軍

王都解放!

――


「……ビラ?」


誰かが呟く。


それは宣戦布告であり、同時に――

“私たちは隠れない”という意思表示だった。


船は波を切り、夜明け前の海へと進む。

名を掲げ、旗を掲げ、そして――戦いは、もう始まっていた。


それと、ほぼ同時刻。


エドラン領主の執務室に、慌ただしい足音が駆け込んできた。

封蝋の色を見た瞬間、領主の表情が引き締まる。


「……緊急二、だと?」


緊急一に次ぐ優先度。

しかし、それが意味するのは――即応を要する事態だ。


「ナータからか……」


中身を確認するまでもなく、誰からの文かは察しがついた。

領主はその場で封を切る。


「内容は短い。大至急開封されたし……か」


嫌な予感が、背筋を走る。


「何があった……!?」


文を読み進め、領主の顔色が変わった。


――

ロウル、フェルナード連合軍、港より上陸作戦を行う。

合図は港より派手に行いますのでわかると思います。

それに合わせて進軍を願う。

メイヤ。

――


「……なっ!?」


思わず声が漏れる。


「おい!」


控えていた近侍に鋭く命じる。


「港方面に異常があった場合、大至急報告せよ!!」


「はっ!!」


近侍は即座に駆け出した。


領主は机を叩き、立ち上がる。


「……まったく、あの小娘は……」


だが、口調とは裏腹に、その目には迷いが無かった。


「その“合図”を皮切りに、王都へ進軍を開始する!」


執務室に緊張が走る。


「全軍、準備を急げ!!命令系統を確認!補給線の再点検を今すぐだ!」


港で何が起きるかは解らない。

だが――“派手に行う”と言い切る以上、王都が揺れるのは確実だ。


エドラン領主は、外を見据えた。


港が火を噴く時……王都は、もう逃げ場を失う。


こうして、

三つの勢力は――同じ時を刻み始めた。

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