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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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見えない敵ほど厄介なものはない

港が敵勢力下――。


そう考えた瞬間、メイヤの頭の中で一気に選択肢が広がった。


敵兵力は多いのか、少ないのか。

解らない。


ならば答えは一つだ。


「……多いと見て動くしかない」


少ないと踏んで外した時の代償は、取り返しがつかない。


「夜襲……か」


闇夜に紛れての奇襲。

選択肢としては悪くない。


だが、そうなると準備は一気に増える。


「船は……黒く塗る必要があるな。反射は論外だ」


荷馬車も同様。

金属部品の光、衣服の色、武器の反射。


「個人装備も全部だな……」


思考は止まらない。


「訓練も……昼だけじゃ不味い」


夜の視界。

足場。

音。


「日が暮れてからの訓練も必須になるか……」


そうなれば、全体の計画に関わってくる。


「……これは、私一人で決める話じゃないな」


メイヤは額を押さえた。


アステリア。

近衛隊長。

機構隊長。

お姉ちゃん。


少なくとも、この4人とは話を通さなければならない。


「そもそも――」


一番厄介なのは、別に港そのものじゃない。


「敵が、見えない事だ」


敵の数も、指揮系統も、目的も不明。


となれば、決め打ちは危険だ。

柔軟な対応を前提にした作戦が求められる。


「……頭の中で悩んでても、答えは出ないな」


メイヤは立ち上がった。


「さっさと相談だ」


一人で抱えても、出来る事は限られている。

だが、意見を集めれば、選択肢は増える。


一つでも多く。

一つでも早く。


「動くなら、今だな」


そう呟き、メイヤは部屋を後にした。


見えない敵に対抗するには、考えるより先に、“話す”必要があった。


早速集められた、四名。


机を囲み、準備の進捗状況を改めて共有していく。

船、兵、訓練、装備――大枠は揃っている。問題は、その先だった。


「……私は細かい戦略や戦術は、正直疎い部分があるわ」


メイヤは率直に切り出した。


「だから、お姉ちゃん以外の、あなた達の情報や経験則はかなり重要視してる」


全員の視線が自然と集まる。


「どう?」と言われても困るのは解っている。

それでも、聞かずにはいられなかった。


「まあなぁ〜……」


機構隊長が椅子にもたれ、気だるそうに天井を見る。


「正直、どうもこうもねぇよ。情報が全く無いからな」


「そこだな」


近衛隊長が短く頷いた。


「敵の兵力、配置、指揮系統。どれも不明。見えているのは“港に外国船が停泊している”という事実だけです」


「……そこなのよね」


メイヤは小さく息を吐いた。


「じゃあ、今の段階での作戦は?」


少し間を置いて、機構隊長が口を開く。


「そうだな……王都の港、第三区に上陸」


机の上に指で簡単な地図を描く。


「その後、ババアが恐らく立て籠もってる本部へ向かう」


「同時に」


近衛隊長が続ける。


「近衛は王室方面へ。王室から可能な限り情報を回収し、そのまま本部へ合流」


「……その後は?」


「正直、未定だ」


機構隊長が肩をすくめる。


「情報次第で変わる」


「まあ……そうなるわよね」


メイヤも否定は出来なかった。


「問題はそこだな」


近衛隊長の表情が少し厳しくなる。


「情報を擦り合わせてから動く、という前提が成り立つかどうか」


「時間も無いし、兵力も限られてる」


機構隊長は言いながら、机を睨む。


「一番怖いのは――」


バンッ!!


突然、拳が机を叩いた。


「相手を見誤る事だ!」


部屋の空気が一気に張り詰める。


「少ないと思って突っ込めば、多かった時点で詰む」


「逆もまた然り、だな」


近衛隊長が静かに続ける。


「過剰に警戒し過ぎれば、時間を失う」


メイヤは黙って頷いた。


見えない敵。

限られた時間。

限られた兵力。


「……だからこそ」


彼女はゆっくり口を開く。


「“最悪を想定して、それでも動ける形”を作らないといけない」


誰も反論しなかった。


この場にいる全員が、同じ結論に辿り着いていたからだ。


問題は――

それを、どう形にするか、だった。

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