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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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朝の運動、普通の衝突

朝靄がまだ残る時間帯。

訓練場には既に人影があった。


「今日も早いわね」


「まあな。習慣みたいなもんだ」


リディアとアステリアが軽く言葉を交わしながら、準備運動をしている。


少し離れた場所にはセリアと近衛隊長。

近衛隊長はリディアとの打ち合わせの為、朝の時間を使って顔を出していた。


やがて学生隊が集まり始める。


そんな中——


「おはようございます!」


一際はっきりした声が響いた。


全員が一斉に、声のした方を向く。


そこに居たのはナータだった。


「あー、話は聞いてるわ。ナータ様。今日から運動に参加すると」


「ええ。よろしくお願いします」


学生隊の中から、ひそひそと声が漏れる。


「……伯爵の?」


「本物?」


「マジで?」


ナータは気にしない様子で辺りを見回す。


「まず、何からやるのかしら?」


「軽いストレッチから始まってマラソン。それから各々、苦手な所の基礎訓練。最後に実戦形式の打ち合いですね」


「そう。解ったわ」


——まあ、普通の流れ。普通、、、ね。


リディアが声を張る。


「じゃあ皆!いつも通り背負って!」


「……背負って?」


ナータが首を傾げる。


近衛隊長が説明する。


「軍の場合、移動中は荷を背負うだろ?体格ごとに重さを調整してある」


「……これを?」


ナータは背負子を持ち上げ、眉をひそめる。


「それなりに重いわね……これでマラソン?」


——はぁ、はぁ、はぁ……


想像以上に息が上がる。


「はい!終了!」


合図と共に、それぞれが自主練に散っていく。

腹筋を始める者、再び走り出す者、馬に跨る者。


まあ……これくらいなら……


「ナータ様、大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。これぐらい」


「ですが初日ですし——」


「そうね」


ナータは少し考え、顔を上げた。


「私、実戦経験が無いの。そちらをやりたいわ」


「……はぁ。武器は何にします?」


「剣にしましょう」


ナータは周囲を見渡す。


「誰か、お相手してくれる?」


学生達は一斉に目を逸らした。


——そりゃそうよね。


相手は伯爵の娘。

怪我でもさせたらどうなるか、考えなくても分かる。


家柄って、こういう時は邪魔ね。


ナータは内心で溜息をつく。


さて……誰なら出てくるかしら。


視線を巡らせ、狙いを定める。


「リディアさん、私のお相手してくれる?」


「え?私ですか?私は近衛隊長と打ち合わせが——」


「近衛?……あ、コーノエさんか」


上手く逃げたわね。


「では、アステリア様は?」


「いや、俺は——」


一国の領主。波風は立てづらい。


……ダメか。


「それとも、奥様でも?」


「私?私、フォークより重い物は持った事ないですし……」


「あら?そうでしたの?それとも変装しないと重い物は持てないのかしら?」


ぴしっ。


リディアが反応した。


「……変装?」


まずい……母親の威厳が……


言い切る前に——


「では、私が!」


セリアが一歩前に出た。


「武器をどうぞ?」


「ですから私はフォークより——」


その瞬間。ナータが踏み込んだ。

どう?普通じゃない動きは!


「てぁ——!」


「あらあら、行儀の悪い事」


次の瞬間。


セリアの姿が、ふっと消えた。


「——え?」


気付いた時には、ナータの頭に手が置かれ、

そのまま背後へ。


「なっ——!?」


振り返る間もなく、衝撃。


——ぐしゃっ!


ナータの身体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。


「……っ!?」


何が起きた?何故、私が飛ばされて——?


「くっ……」


「あら。おじょーちゃん♡」


まだ行ける。何が起きたか解らないけど——


「もう一度!」


次の瞬間、視界が白く弾けた。

そしてナータの記憶は、そこで途切れた。

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