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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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失敗もまた舵になる

アステリアは、ふっと肩を落とすように呟いた。


「……俺達のやっていた事は、無駄って訳か……」


その言葉が落ち切る前に、メイヤが間髪入れず返した。


「え?無駄にするの?」


「……え?」


思わず聞き返すアステリア。


「両側式だって、十分に価値があるわよ」


「小回り、効くはずでしょ?」


アステリアの眉が動く。


「片方を逆回転させれば――」


「その場で、くるくる回れるはず」


「……!」


「今まで狭くて入れなかった港にも入れるかもしれない」


「荷卸しだって、この“吊り橋”を付ければ――」


「……届く、かもか!?」


「そう」


メイヤは嬉しそうに頷いた。


「それに、後方に付ける水車」


「あれ、川を上れるかもしれないわよ?」


「……川!?」


思わず声が裏返る。


「そうよ」


「両岸から馬で引っ張らなくて良くなるんだから」


一拍の沈黙。


そして――


「……ん、ふふ……」


「ふふふ……!」


「……あっははははは!!」


アステリアが、腹の底から笑い出した。


「要は……!」


「要はだ!」


「失敗させるのも、成功させるのも――」


「俺達次第って事か!!」


「そうよ!!」


メイヤは、迷いなく言い切った。


技術も、理論も、設計も。

それが“正しいかどうか”ではない。


どう使うか。どこまで磨くか。

それを決めるのは――人だ。


アステリアは拳を握り、前を見た。


「……だったら、やるしかねぇな」


失敗もまた、舵になる。

そしてその舵は、今、確かに握られていた。


会合の後、関係者達はそれぞれ、関係がありそうな者同士で軽く言葉を交わしながら散って行った。


その中で――

明らかに一番ぐったりしていたのは、機構隊長と秘書ーズだった。


机に突っ伏す者。

椅子に深く沈み込む者。

最早、立っているだけで限界といった有様である。


「……大丈夫か?」


近衛隊長が声を掛けるが――


「……まあ……」

「……何とか……」


機構側の四人は、力なく短く返すだけだった。


近衛隊長は首を傾げつつ言う。


「しかし驚いたな。船から一斉に兵を降ろす、あの発想は」


すると機構隊長が、顔を上げて即座に噛みつく。


「ばか!それも驚いたが、そこじゃないんだよ!!」


「……ん?」


困惑する近衛隊長をよそに、秘書の一人が深いため息と共に口を開いた。


「……私達からするとですね」


「今日の会話の中で、機構側がどれだけドン引きしたか、分かってます?」


続けて、別の秘書が声を荒げる。


「そうですよ!!あの短時間の会話の中で、何個の発明、発見が飛び出したと思ってるんですか!!」


「いえ、個じゃありません!」


「十は軽く超えてます!!」


機構隊長は頭を抱えた。


「登録……設計……理論整理……安全審査……」


「既存法との整合性……」


「新規分類……」


秘書達が口々に続ける。


「これからですよ……」


「徹夜です!!」


「全部、書類に起こさなきゃいけないんですから!!」


「もーーーーうーーーー!!」


その叫びは、どこか悲鳴に近かった。


近衛隊長は、黙ってその様子を見渡し――

ゆっくりと一歩、距離を取った。


……触れないでおこう。


誰もがそう思った。

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