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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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白旗の上がる音

どうする?

どうする?

どうする――!?


先ほど頭の中で巡らせた最悪の懸念が、目の前で現実になり始めている。


始まってる……完全に始まってる!!


ロウルの技術者たちは顔色真っ青だ。

無理もない。さっきまで「もしも」の話だった懸念が、そのまま工程表になって転がり始めたのだから。


俺たちが考えていた後方型の仕組みも……簡単に突破された。

いや、突破ですらない。壁にも切り札にもなっていなかった……


メイヤの顔が脳裏に浮かぶ。


あいつだ。あいつは、時間がかかろうが、やると言ったら必ずやる!

やらなきゃ気が済まない性格だ……!


アステリアが頭を抱え、思考がぐるぐると空回りしているその最中――。


「ロットさん!木材の供給状況は?」


「町の工事が中止になったから、たっぷりあるぞ!それにドック?港?だろ?作ってる間に、もっと貯まるわい!やっと作りかけの船も完成させられるのう!」


こいつか!!


ロットは目を輝かせていた。


「この歳で船が作れるとはなぁ!!わし、燃えとるぞ!!」


このクソじじい!!


「タルトさん!余ってる蒸気機関、アステリアさんに渡してあげて!」


「…………」


「……おっ、おうー!」


完全に流れが決まっていく。


「メイヤちゃん!メイヤちゃん!造る船って、どんな船なんじゃ?」


「そうねぇ。予定だと、大きさは今の倍くらいの長さかな?形は流線型よ」


「ほうほう!」


「蒸気機関は二基搭載予定。搭載量も速度も、今までの倍はいけると思うわ」


「――はっ!?」


倍?速度も、搭載量も?


利益は……?


アステリアの頭が、別方向にフル回転を始める。


「人もたくさん乗せるのか?」


「ううん。乗員はむしろ少なくなるわよ?」


「帆が要らなくなるもの」


……間違ってない!俺も同じ結論に行き着いていた


だが――。


待て待て待て!!


船すら持たない領地で、そこまで考えてるのか!?


メイヤを見る。


こいつだ……


下手をすると、ここで量産して世界中にばら撒くぞ……


性能を思い浮かべる。


こんな船……今の三倍以上の価格でも、余裕で売れる……!!そんな事したら造船も行ってるうちの領地は!!


アステリアの目から、ぽろりと涙が落ちた。


「……降参だ」


誰に向けるでもなく、絞り出すような声。


「……勘弁してくれ……」


そして、ついに叫んだ。


「船はやる!!好きに改造しろ!!もう好きにしてくれぇぇ!!」


その瞬間、部屋の空気が一気に緩む。


メイヤはにっこりと微笑み、こう締めくくった。


「ありがとうございます、アステリアさん」


「では――本格的に始めましょうか」


ロウルの誇りは、この日、完全に白旗を上げた。

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