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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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静かな賭けと蒸気の行方

ロウル領の方々のために用意された宿舎。その一角にある一室に、一同は集められていた。


アステリア以下、ロウル領の技術者全員。

それにこちら側からは、両隊長、リディア、木工師ロット、鍛冶士タルト、錬金術師ブルー、各秘書そして関係がありそうな学術員が数名。


無論、この場を召集したのはメイヤだった。


まさか、たまたま作った宿舎が、こんな形で役に立つとはね……


ここは他国の領地。

一般人が立ち入ることはまずない。

極秘の話をするには、これ以上ない場所だった。


「忙しい所、集まってくれてありがとうございます」


メイヤが一歩前に出る。


「本日の目的ですが――温泉……ではありません」


一瞬、場が緩みかけたが、次の言葉で一気に締まった。


「反乱を沈静化させるための計画です」


ざわり、と空気が揺れる。


「最初に言っておきます。どれか一つでも計画が進まなかった場合、この話は即時中止。関係書類はすべて焼却します」


その一言で、部屋の空気は凍り付いた。


「これから配る書類をご確認ください」


配られた紙に、全員の視線が落ちる。


「「「なっ!!」」」


そこに書かれていたのは――

船改造計画(強襲揚陸艦)


案の定、真っ先に噛みついたのはアステリアだった。


「テメー!うちの船を、訳の分からん改造するだと!?」


無理もない反応だ。

しかも他国の人間が、ロウルの宝とも言える船に手を入れると言っている。


「アステリアさん、落ち着いて……と言っても無理ですよね」


アステリアは今にも飛びかかりそうな勢いだった。


だが、メイヤは一切動じず、淡々と続ける。


「アステリアさんと、そちらの技術者の方々が悩んでいる蒸気機関の“海での使い道”。その解決方法を思いつきました」


「「なっ!!」」


「もちろん、現段階では理論上の話です。これから実験、試験、運用と進める必要があります」


一拍置き、


「ですが、船改造計画を了承していただけるなら、その理論と、蒸気機関を無償で提供します」


「「な……」」


ロウル側が一斉にざわめいた。


アステリアの脳裏に苛立ちが走る。

馬鹿にしているのか?

蒸気の海上利用など、すでに水車を元にした設計が進んでいる。

水が動力なら、逆にすればいい――それは彼女達も考えていた。


「メイヤ……私たちを馬鹿にしてるのか?そんなも――」


だが、言葉を遮るようにメイヤが口を挟んだ。


「水車のようなもの、ですか?」


「!?」


「私が思いついたのは、それよりも、もっと効率的で無駄のない方式です」


さらりと、


「理論上ですが、簡易な模型はすでに手元にあります」


空気が、変わった。


「ここで即答を求めるつもりはありません。ロウルの方々だけで話し合いたいのであれば、私たちは部屋を出ても構いません」


ロウルの技術者たちが、一斉にアステリアを見る。


アステリアは拳を強く握りしめ、歯を食いしばった。


「……どれくらい時間をもらえる?」


「長くなるようでしたら、一時解散でも結構です」


「分かった。長引かせるつもりはない。解散も含めて、1時間ほどで答えを出す」


「了解しました。お待ちします」


そう告げたメイヤの表情には、焦りも強制もなかった。


ただ一つ――この賭けに勝つ自信だけが、静かに宿っていた。

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